尖閣の海を覆う海上民兵…中共海軍別働艦隊の奇襲

南シナ海で行き場を失ったシナ海上民兵は北東に進路を取った。300隻を超える武装漁船団が尖閣諸島沿岸に展開。緊迫した状況が続く中、現場に急行するメディアはなかった…
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「原子爆弾の犠牲となられた数多くの方々の御霊に対し、謹んで哀悼の誠を捧げます」

慰霊碑に献花した安倍首相は、メッセージを読み上げた。惨劇から71年を経た8月6日の厳粛な朝。例年、首相は早朝から広島に入り、式典に参加する。政権が何度変わっても、この光景は変わらない。
▽献花する安倍首相8月6日(産経)
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首相が必ず官邸から離れる朝…その隙を中共海軍が突いてきた。余りにも卑劣な手口である。核攻撃時刻の8時15分、公園の鐘が鳴らされ、式典参加者全員が黙祷を捧げる。

中共の艦隊が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入したのは、同日8時5分のことだった。黙祷の僅か10分前。決して偶然ではない。中共はそのタイミングを狙い、厳粛な瞬間を嘲笑って侵略行動に踏み切ったのだ。
▽侵入した中共武装警備艇8月6日(海保11管本部)
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接続水域に突入した武装船は6隻にのぼった。所属は中共のコーストガード=海警局だが、実態は中共海軍の別動部隊。警察行動ではなく、あくまでも軍事行動である。

「緊張を更に高める一方的な情勢のエスカレーションであり、決して受け入れられない」

外務省アジア大洋州局の金杉憲治局長は直ちに駐日中共公使に電話を掛け、遺憾の意を伝えた。ところが、午後2時頃には新たに1隻の中共艦艇が接続水域に侵入した。完全に舐められている。
▽機関砲搭載した海警35104(海保)
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また外務省は「海警7隻が同時に入るのは異例」と説明する。この“寸評”を素直に解読すれば、朝8時過ぎに侵入した艦隊6隻は、抗議を無視して接続水域内に留まっていたのではないか?

そして、中共艦艇の周辺には支那漁船300隻が確認された。それだけでも異様な数だが、一部報道は「接続水域周辺に数百隻規模の中国船が入るのは異例」という外務省の“寸評”を伝えている。
▽尖閣諸島の領海と接続水域(読売)
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接続水域に侵入した支那漁船が300隻で、周辺には数百隻が展開していたと考えられる。恐れていた支那武装漁船団の襲来が現実のものとなったのだ。

【シナ大船団奇襲計画の復活】

「今年6月17日、1,000隻の船で尖閣海域に押し掛け、一部は上陸するという計画を当初、立てていたと聞いています。外務省は把握しているのか?」

民主党政権時代の平成23年、衆院安全保障委員会で、そのような質疑があった。「華人保釣連盟」を自称する中共の隷属団体が、大量の漁船で尖閣に突入、上陸を決行すると予告していたのだ。
▽尖閣上陸を宣言する反日団体'11年(共同)
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東日本大震災の発生で上陸計画は夢想に終わった。しかし、侵犯船事件の直後から武装漁船団の尖閣襲来は、予想される侵略シナリオとして懸念されていた。

それは、既に過去に起きていたことだったのだ。昭和53年(’87年)4月、上海方面から出現した支那武装漁船40隻が、尖閣の領海に侵入。当時の福田政権をパニックに陥れた。
▽尖閣に侵攻した支那武装漁船(沖縄タイムス)
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既存メディアの殆どがタブー扱いにしている大事件である。日支条約締結の直前だったことから、日本側も強い姿勢を示さず、「一部跳ね上がりの行動」で手打ちとなった。

この時の手緩い対応が6年前の侵犯船事件を招き、中共海軍別働艦隊の侵犯常態化を引き起こし、遂には武装漁船団の再来襲に繋がった。しかも「38年前の悪夢の再現」に留まらない規模だ。
▽海警の背後に多数の武装漁船8月6日(海保)
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38年前に尖閣海域に現れた中共武装漁船は、合わせて140隻だった。ところが、今回、押し寄せた船団は数百隻。接続水域に達しただけでも300隻にのぼる。

更に、機関砲を装備した「海警35115」など中共海軍の別動艦隊7隻が、武装船団を引率する形で接続水域に突入してきたのだ。「一部の跳ね上がり」では済まされない。
▽海警の後方に大型船が見える(海保)
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習近平指導部による組織的・計画的な軍事行動である。

【予告された東シナ海の波乱】

「8月、尖閣周辺で日中軍事衝突の危機がある」

一部タブロイド紙でそんな噂が囁かれたのは、7月中旬のことだった。中共指導部は、南シナ海での失点を東シナ海で取り返すべく、行動に出るのだという。
▽東シナ海の中共大規模演習8月1日(新華社)
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情報ソースの「米情報筋」は怪しさ満点だが、実際に習近平は尖閣海域で一線を越える軍事行動を起こした。それが南シナ海情勢と密接に関連していることも、恐らく事実だ。

7月25日に発表されたASEAN外相会議の声明は、ハーグの裁定に触れなかった。カンボジアなど加盟国を恫喝した結果だが、中共は「外交上の勝利」と自画自賛した。
▽勝利宣言する王毅7月25日(ロイター)
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しかし、それに先立つASEM首脳会合では、李克強の猛烈な抵抗も虚しく、ハーグ裁定を念頭に国際法の順守を謳った議長声明を採択。欧米各国の足並みも揃い、中共は追い詰められている。

尖閣に中共海軍別働艦隊が出現した日、南シナ海スカボロー礁上空で中共空軍の爆撃機・戦闘機が威嚇飛行を始めた。この暗礁周辺は、ハーグ裁定でフィリピン漁民らの伝統的漁業が認められた海域だ。
▽スカボロー礁に上陸する比人有志6月(地元紙)
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習近平指導部は、暗礁付近の人工島造成を止めず、要塞化を進めている。国際司法機関の判決を無視した侵略の続行。だが、当初の侵略プランは変更を余儀なくされ、展開する中共軍兵力の一部が余った。

「中国海軍の高官と海上民兵について意見交換し、強い懸念を伝えた」

米太平洋艦隊のスウィフト司令官は今年春、そう明かした。昨年10月、航行の自由作戦に参加したイージス駆逐艦ラッセンが支那海上民兵の乗る漁船に取り囲まれる局面があったという。
▽作戦主導した米駆逐艦ラッセン(file)
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武装した漁民で編成される海上民兵。その存在は、尖閣侵犯船事件の当時から指摘されていたが、国会やメディアで取り上げられることはなく、VIP待遇で帰国した船長も単なる漁民として片付けられた。

海上民兵は“日本右翼”による妄想の産物などではない。南シナ海情勢の緊迫化で米政府高官や識者による研究と実態解明が進み、中共側も存在を隠さなくなっているのだ。

【シナ海上民兵は正規軍人】

「海上で活動する民兵組織は拡大している。国がそれを必要としているからだ」

ロイター通信の記者に対し、支那・海南省の政府顧問は匿名を条件に、そう語った。同島の鄙びた港・白馬井の漁船団は軍事訓練に参加することで助成金や燃料など様々な支援を受けていると明かす。
▽取材を受けた海南島の漁船団(ロイター)
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「一部の漁船には小型の武器が搭載されています」

地元漁師らの証言だ。また省政府は、助成金を使って木製から鋼鉄製の船に変えるよう奨励している。尖閣侵犯船事件の漁船が、鉄製の頑丈な船首だったことを思い起こす。

海南島の漁船団は、中共海警局と連携し、パラセルのウッディー島に立ち寄ることもあるという。隠す必要はない。中共宣伝機関は、ウッディー島の海上民兵部隊を写真入りで紹介している。
▽ウッディー島海上民兵の創設式'13年(新華社)
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「最精鋭部隊は、必要があれば機雷や対空ミサイルを使い、『海上人民戦争』と呼ばれるゲリラ攻撃を外国船に仕掛けるよう訓練されている」

米海軍大学校の研究者は、そう指摘する。キーワードは人民戦争。毛沢東による暴力革命思想の根幹だ。海上民兵とは、中共建国当初から準軍事組織として整備された民兵の海洋バージョンである。
▽海上民兵の女性部隊'13年(新華社)
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「海上民兵はれっきとした中華人民共和国の正規軍人であり、素性の怪しい戦闘集団というのも大きな間違いである」

元駐北京武官だった自衛隊戦略研究室長は、海上民兵を正規軍人と説く。影のゲリラ部隊でもければ、漁民を装った便衣兵でもなく、支那の兵役法にも、こう規定されている。

「民兵は生産活動から離れることのできない民衆の武装組織であり、人民解放軍の助手的後備兵力である」
▽海上民兵の公開訓練'13年(新華社)
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海上民兵は、沿岸各地方政府の人民武装部と中共軍分区の司令部が二重に管理する。要請に応じて兵站作業に加わり、前線で敵施設の破壊や偵察にも従事するという。

職種分類上は「漁民」とされるが、予備役や武警に続く「第三の軍人」に他ならない。近年では、機雷敷設の訓練を受けるなど高度化し、中共海軍との合同演習まで行われている。
▽機雷敷設訓練受ける支那漁船(米政府提供)
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機雷の設置に小慣れた漁師さんが、どこの世界にいるのか…

【誰に配慮…謎のモザイク写真】

習近平指導部は、パラセル周辺の海上民兵を増強し、前線への展開を準備していた。フィリピンなどが実効支配する海域に送り、衝突を誘発させる為だ。70年代のウッディー島侵略と同じ手口である。

しかし、ハーグ裁定により、過激な軍事行動は慎重にならざるを得なくなった。現状では人工島要塞の保守で精一杯…訓練を続けてきた海上民兵の士気は落ちるばかりだ。
▽訓示を受ける海上民兵女性部隊(新華社)
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そこで思い付いたのが、海上民兵部隊の東シナ海派遣だった。今回、尖閣諸島周辺に現れた武装漁船は、福建省ではなく、海南島周辺の船が多く含まれていると考えられる。

武装漁船の船名さえ判れば、母港を辿ることも可能だ。8月6日の300隻侵入で海上保安庁は「漁船写真」を1枚リリースした。ところが、拡大すると船名が記された部分にモザイクが入っていた…
▽尖閣海域に侵攻した武装漁船8月5日(読売版)
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この写真を掲載した二紙が共に加工済みだった。一体、海保は誰に配慮したのか…意味不明すぎる。そして、押し寄せた武装漁船群を上空から捕らえた写真は現在まで公開されていない。

300隻、あるいは数百隻という大船団の写真は、日本国民に大きな衝撃を与える。それで何か困ることがあるのか…逆に言えば、武装漁船団の異様な全体像を直視しなければ、国民は危機感を持たない。
▽出港する中共武装漁船団'12年(ロイター)
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機関砲装備の海警3隻と武装漁船が初めて同時に接続水域に侵入したのは、8月5日だった。この事態を受けて翌日、尖閣方面に社機を派遣した報道機関は1社もなかった。

38年前の第1次尖閣危機では、朝日新聞ですら現場に社機を飛ばした。当時と比べ、報道各社が所有するレシプロ機は充実している。海保から複製写真を貰い、適当な論評を付けてお仕事終了だ。
▽海保巡視船と武装漁船団S53年(朝日)
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大船団の襲来から1夜明けた7日、海警の武装船は新たに6隻が出現し、計13隻にまで膨れ上がった。更に、4隻が領海侵犯を繰り返すなどエスカレートしている。

いったい、尖閣周辺海域で何が起きているのか。国民は聾桟敷に置かれたままだ。そして、メディアは中共武装警備艇を「公船」と表現し、海上民兵を「漁民」と呼ぶ。
▽尖閣沖の中共海軍別働艦隊8月7日(海保)
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魚影を追って大勢の支那人漁師が、たまたま尖閣周辺に集まったと誤魔化したいのか? 東シナ海の緊迫は遥か遠く、状況は闇の中。危機は危機として伝えられない…

繰り返し、訴える。それこそが我が国の直面する深刻な危機だ。



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参照:
海上自衛官幹部学校HP平成25年12月8日『コラム:防衛駐在官の見た中国(その13)-海上民兵と中国の漁民-』
ブログ「蒼き清浄なる海のために」’10年10月13日『中国の武装海上民兵は過去に尖閣諸島に来ている・その1』

参考記事:
□ロイター5月3日『アングル:中国が「漁船団」に軍事訓練、南シナ海へ派遣』
□WSJ15年4月1日『知られざる中国の「海上民兵」―漁船が軍事組織に』
□産経新聞5月8日『中国の海上民兵、米イージス艦を包囲 過去2回の「航行の自由」作戦中 米司令官明かす 中国に強い懸念伝達』
□人民網’13年7月23日『三沙海上民兵部隊が創設 女性民兵が56式歩兵銃を持って宣誓』

□産経新聞8月6日『尖閣へ集結の中国漁船約230隻、乗り込むのは軍事訓練受けた漁民か 習近平政権、日本支配の打破へ新段階 南シナ海関与を牽制も』
□産経新聞8月7日『尖閣周辺で中国公船 13隻、過去最多…政府は3日連続抗議 領海にも断続的に侵入』
□NHK8月7日『尖閣沖に中国当局船が13隻 国有化後で最多 警戒強める』
□時事通信8月6日『尖閣周辺に中国漁船230隻=公船も7隻、外務省が抗議』
□ZAKZAK7月21日『【スクープ最前線】南シナ海でメンツ丸潰れの中国、尖閣軍事衝突を画策か 都知事選で工作説も』

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