香港の終末時計は刻々と進む…期限付きの「自由と民主」
血のキャンパス事件は未然に防がれた。区議選圧勝と米の香港人権法成立で民主派陣営に追い風が吹く。だが、そにあるのは期限付きの自由と民主だ。一党独裁の全体主義が刻々と迫る。
支那大陸では毎日必ず何処かで暴動が起きている…こうした表現は決して大袈裟ではなく、寧ろ事態を矮小化するものだ。尖閣騒動の頃、櫻井よしこ氏が語っていた言葉を思い出す。
「中国では毎年10万件の暴動が発生している」
スケールが違いすぎて想像が及ばない。「一日一暴動」どころか、毎日300件に相当する。広東の田舎で起きた住民と機動隊の衝突劇も、そんな“日常的な暴動”のひとつに見えたが、趣きは異なっていた。
▽広東省茂名市の住民蜂起11月28日(SCMP)
「時代革命!」
公安と衝突した住民は、そう叫んでいたという。英文記事では「Revolution now !」。ご存じの通り、香港の反送中デモで定番となっているスローガンである。
大規模衝突が起きた場所は、香港にも比較的近い広東省の茂名市だ。公園建設と告知されていた区画が実は火葬場と発覚。怒った住民が大規模な抗議活動を繰り広げた。
▽茂名市中心部で睨み合う住民と特警11月28日(RFA)
「光復茂名」といったシュプレヒコールも聞こえた。これは「香港光復」にあやかったもので、また火葬場建設の中止や拘束者の解放などを訴える「五大要求」も飛び出したという。
「11月29日はゼネストが呼びかけられ、5,000人以上が抗議に駆け付けた」
地元住民によると小規模の抗議が拡大したのではなく、最初から激しかった模様だ。速報したRFAは、背景に風水の問題があった可能性を指摘するが、抗議者のフレーズは香港民主派と直結している。
▽茂名市に集結した治安部隊11月(流出画像)
興味深いのは、当局側が早々に幕引きを図ったことだ。武装車両を投入し、抗議者を大量拘束する一方で火葬場の建設中止を表明。住民代表との話し合いで騒ぎを瞬く間に終息させた。
支那全土への飛び火を極端に恐れた北京が異例の対処をしたように見える。今後も各地で同様のスローガンが叫ばれるだろう。香港人の勇気が、一部の支那人に影響を及ぼし始めていることは確かだ。
▽茂名市中心部で開かれた抗議11月(SCMP)
しかし歓迎すべき動きとは言い切れない。本土波及を防ぐ為、中共は“元凶”とする香港民主派への弾圧を強める公算が大きい。
【北京が選挙速報に蒼ざめた日】
再び香港中心部がガスに覆われた。12月1日、九龍・尖沙咀で行われた大規模な抗議デモに対し、警官隊は催涙弾を乱射。この2週間で好転しかたに見えた香港情勢だが、当局側の姿勢は強硬なままだ。
▽催涙弾を浴びる尖沙咀のデモ隊12月1日(Bloomberg)
「政府はまだ我々に耳を貸そうとしない。市民はなおも非常に怒っていて、変化を求めている」
デモに参加した学生は、そう話す。11月24日投開票の区議会議員選挙で民主派陣営は圧勝した。総議席数の85%を獲得する歴史的な大勝利で、親中派を壊滅状態に追いやった。
「民主派が貰った一票一票はすべて市民が流した血だ。沢山の人が負傷し、暴行され、実弾に撃たれ、亡くなった人もいる」
▽取材に応じる周庭さん11月25日(産経)
取材に応じた周庭さんは淡々と語り、抗議活動の継続を宣言した。香港政府側の態度が変わらないことを予見している。それでも、香港人の民意が決定的な形で示された意義は大きい。
前回’15年の区議会選では親中派が大勝し、民主派陣営は3割を下回った。この選挙が雨傘運動の後だったことが重要だ。香港政府を激しく揺さぶった長期の抗議にも拘らず、親中派は優勢を保った。
▽投票率と獲得議席数の比較(NHK)
投票率も過去最大だった前回を大幅に上前る71%に達した。挫折を余儀なくされた雨傘運動とは次元が異なる。中共の選挙工作も、投票率の高さに粉砕されたのではないか。
「6月からこれまでの間に様々な犠牲を払った香港人にも感謝したい。彼らの犠牲が米国を動かした」
雨傘運動を率いた黄之鋒さんは11月28日、会見でそう語った。米国で香港人権民主法が成立したことを受け、香港島・エディンバラ公園で1万人規模の感謝集会が開かれた。
▽約1万人が参加した感謝集会11月28日(AP)
大統領の署名がなくとも12月3日までに自然成立する流れだったが、トランプ大統領はサインに踏み切った。優遇措置の評価・見直しに加え、人権抑圧に関与した当局者に制裁を科す条項も含まれる。
12月1日には「天滅中共」の幟と共に星条旗を掲げた感謝のデモ行進も催された。呪文詠唱のように平和を唱える国よりも、毀誉褒貶あれど他国民から感謝される国家を我が国は目指すべきだ。
▽星条旗を翻す感謝のデモ行進12月1日(時事)
一方、ほぼ同時に複数の「NO」を叩き付けられた中共サイドは、態度を硬化させる。譲歩する選択肢は初めから存在しない。
【“タイムラグ激怒”の理由は明快】
「誤った措置に対して必ず報復し、一切の悪い結果は米国が負うことになる」
中共外交部は11月28日、駐北京米大使を呼び付け、強く抗議すると同時に報復を宣言した。予想された展開だ。しかし、貿易交渉を睨んで、中共の反撃は今のところ弱々しい。
▽報復措置を発表する中共外交部の華春瑩12月2日(共同)
中共が12月2日に発表した報復は、米軍艦艇の香港寄港拒絶と米NGO活動制限という毒にも薬にもならない中途半端な2本柱だった。1枚のカードすら切っていない感じだ。
昨秋の強襲揚陸艦「ワスプ」に続き、今夏もミサイル巡洋艦などが寄港を拒まれている。米国にとっては英国領時代からの習慣で、寄港目的は兵員のR&R(休息と保養)だという。
▽香港に寄港した米第7艦隊旗艦4月(CNN)
活動制限の対象組織も、以前から中共がデモの黒幕と名指しするNED(全米民主主義基金)やワシントンに本部を置くNGOなど僅か5団体。いずれも支那本土では活動していない。
逆にリストから漏れる国際人権団体の方が痛い。因みに制裁対象のフリーダム・ハウスは「世界の自由度」番付で昨年度、日本をアジア1位に選出したNGOだ。我が国のメディアで紹介されることはない。
参照:大紀元’18年1月20日『世界自由度ランキング、日本はアジア1位 香港は後退=米人権団体』
「強烈に反対する。この法律はまったく必要ないし、根拠もない。外国による干渉だ」
▽唐突に怒る行政長官の林鄭月娥12月3日(HKFP)
香港行政長官の林鄭月娥は12月3日の会見で、そう吐き捨てた。何か時系列が狂っている印象だ。法律成立直後だった11月29日の会見では、憤慨する様子もなく、控え目に話していた。
ところが4日後には別人のように怒り狂う…二重人格でも憑依されたのでもない。及び腰の北京の代わりに、米国を糾弾するよう中共指導部に命令されたのだ。汚れ役である。
▽外遊先の会見では冷静だった林鄭月娥11月29日(ロイター)
立法府を占拠した台湾国ひまわり学運との比較で、香港には学生側の代表・交渉人が居ないことが指摘される。しかし実際、香港には市民・学生側どころか、政府側にも交渉窓口が存在しない。
全ての決定権を握る人物は北京にいる。林鄭月娥は中共指導部の操り人形であって意思を持たず、交渉も駆け引きも不可能。「対話の扉」は閉ざされているのではなく、最初から何処にもないのだ。
▽抗議者が排除された香港中心部12月1日(RFA)
これが“一国二制度”香港の悲劇である。
【期限付きの「自由と民主主義」】
最悪の事態に至る材料は悉く揃っていた。徹底抗戦を叫ぶ一部学生とキャンパスを完全に包囲した制圧部隊。燃え上がる炎に反比例して食糧は尽きて行く。
▽炎と黒煙に包まれた香港理工大11月17日(AFP)
約1週間に渡った香港理工大の攻防は、周辺を含め1,400人近くが拘束されたものの、流血の大惨事は免れた。双方に死者が出なかったのは、学生側が暴力的ではなかった為だ。
「山の斜面にある中文大より、市街地にある理工大の方が警察にとっては好都合だった」
大学関係者は、そう語る。強硬派の学生がアジトに立て籠もったと報道れたが、校内に居た学生らが追い詰められ、脱出路を塞がれた側面が強い。校庭に描かれた「SOS」は、文字通りの意味である。
▽香港理工大校庭のメッセージ11月22日(AFP)
完全武装の警官隊に抗える強力な火器など誰も持っていない。香港当局は発見した“武器”をメディアに公開したが、大半が火炎瓶で、1丁の改造ガンすらなかった。
「香港にビン・ラディンはいない」
学生を擁護する人権団体の主張は正しかった。仮に学生側が武器を所有し、警官隊に犠牲者が出たなら、構内は六四天安門広場と化した。しかし中共がテロリストと呼ぶ者達の拠点は、この程度だったのだ。
▽理工大の捜索で回収された火炎瓶11月(ロイター)
キャンパスの惨劇は回避された。それでも抗議者が“包囲”されている現状に変わりはない。反中共に立ち上がった抗議者は遅くとも28年後には漏れなく「危険分子」に分類され、弾圧対象と成り果てる。
米議会の有志も、国際的な支援団体も「香港の自由を守る」と言う。だが、予め最終期限が決まっている「自由」などあるのか。果たして、それは自由と呼べる代物なのか?
▽無人となった理工大キャンパス11月22日(AP)
中共政権を崇め、平和の守護者と讃える勢力には無意味な問い掛けだろう。しかし、チベットや東トルキスタンの実情に少しでも触れた者は、連中が冷酷で残忍で容赦がないことを知っている。
一党独裁の全体主義が、やって来る。可能性の話ではなく、確実に来るのだ。非道国家に併呑される年月日が既に決まっている…中世や古代にも経験がない。歴史上初めての異常事態である。
▽香港理工大周辺で佇む学生11月19日(ロイター)
どうすれば、確定している「未来の危険分子」達を救い出せるのか。それもまた人類が歴史上初めて突き付けられた問題だ。最善策を模索する余裕も、躊躇する時間もない。
期限付きの自由と民主主義。予約された恐怖支配。香港の終末時計の針は、今この瞬間も、止むことなく進んでいる。
〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります
↓

参照:
□Hong kong Free Press
□櫻井よしこ公式ブログH23年3月5日『毎年10万件の暴動が起きる中国 胡主席が幹部に強調した規制徹底』
参考記事:
□RFA12月2日『Riot Police Win Back Control of Protest Town in China's Guangdong』
□SCMP11月30日『Chinese city halts crematorium plan but stand-off between police and protesters goes on』
□大紀元12月2日『香港民主化運動の影響か 広東デモで「時代革命」叫ぶ住民 当局譲歩』
□産経新聞12月1日『中国本土・広東省で住民と警察衝突 香港混乱飛び火か 関連書き込み次々削除』
□ZAKZAK12月3日『香港デモ再燃! 中国本土に波及、中国警察は対テロ訓練で“威嚇”』
□JB Press11月28日『中国化にはっきりノー!北京の裏をかいた香港市民(福島香織)』
□AFP11月21日『地面に「SOS」 香港理工大、強硬派数十人の籠城続く』
□産経新聞12月2日『【緯度経度】香港デモに仕組まれた罠 藤本欣也』
□ニューズウィーク12月2日『香港で民主派デモが再開、警察の催涙ガス攻撃も復活』
□産経新聞11月25日『周庭氏、笑顔なき決意「一票一票は市民が流した血」』
支那大陸では毎日必ず何処かで暴動が起きている…こうした表現は決して大袈裟ではなく、寧ろ事態を矮小化するものだ。尖閣騒動の頃、櫻井よしこ氏が語っていた言葉を思い出す。
「中国では毎年10万件の暴動が発生している」
スケールが違いすぎて想像が及ばない。「一日一暴動」どころか、毎日300件に相当する。広東の田舎で起きた住民と機動隊の衝突劇も、そんな“日常的な暴動”のひとつに見えたが、趣きは異なっていた。
▽広東省茂名市の住民蜂起11月28日(SCMP)
「時代革命!」
公安と衝突した住民は、そう叫んでいたという。英文記事では「Revolution now !」。ご存じの通り、香港の反送中デモで定番となっているスローガンである。
大規模衝突が起きた場所は、香港にも比較的近い広東省の茂名市だ。公園建設と告知されていた区画が実は火葬場と発覚。怒った住民が大規模な抗議活動を繰り広げた。
▽茂名市中心部で睨み合う住民と特警11月28日(RFA)
「光復茂名」といったシュプレヒコールも聞こえた。これは「香港光復」にあやかったもので、また火葬場建設の中止や拘束者の解放などを訴える「五大要求」も飛び出したという。
「11月29日はゼネストが呼びかけられ、5,000人以上が抗議に駆け付けた」
地元住民によると小規模の抗議が拡大したのではなく、最初から激しかった模様だ。速報したRFAは、背景に風水の問題があった可能性を指摘するが、抗議者のフレーズは香港民主派と直結している。
▽茂名市に集結した治安部隊11月(流出画像)
興味深いのは、当局側が早々に幕引きを図ったことだ。武装車両を投入し、抗議者を大量拘束する一方で火葬場の建設中止を表明。住民代表との話し合いで騒ぎを瞬く間に終息させた。
支那全土への飛び火を極端に恐れた北京が異例の対処をしたように見える。今後も各地で同様のスローガンが叫ばれるだろう。香港人の勇気が、一部の支那人に影響を及ぼし始めていることは確かだ。
▽茂名市中心部で開かれた抗議11月(SCMP)
しかし歓迎すべき動きとは言い切れない。本土波及を防ぐ為、中共は“元凶”とする香港民主派への弾圧を強める公算が大きい。
【北京が選挙速報に蒼ざめた日】
再び香港中心部がガスに覆われた。12月1日、九龍・尖沙咀で行われた大規模な抗議デモに対し、警官隊は催涙弾を乱射。この2週間で好転しかたに見えた香港情勢だが、当局側の姿勢は強硬なままだ。
▽催涙弾を浴びる尖沙咀のデモ隊12月1日(Bloomberg)
「政府はまだ我々に耳を貸そうとしない。市民はなおも非常に怒っていて、変化を求めている」
デモに参加した学生は、そう話す。11月24日投開票の区議会議員選挙で民主派陣営は圧勝した。総議席数の85%を獲得する歴史的な大勝利で、親中派を壊滅状態に追いやった。
「民主派が貰った一票一票はすべて市民が流した血だ。沢山の人が負傷し、暴行され、実弾に撃たれ、亡くなった人もいる」
▽取材に応じる周庭さん11月25日(産経)
取材に応じた周庭さんは淡々と語り、抗議活動の継続を宣言した。香港政府側の態度が変わらないことを予見している。それでも、香港人の民意が決定的な形で示された意義は大きい。
前回’15年の区議会選では親中派が大勝し、民主派陣営は3割を下回った。この選挙が雨傘運動の後だったことが重要だ。香港政府を激しく揺さぶった長期の抗議にも拘らず、親中派は優勢を保った。
▽投票率と獲得議席数の比較(NHK)
投票率も過去最大だった前回を大幅に上前る71%に達した。挫折を余儀なくされた雨傘運動とは次元が異なる。中共の選挙工作も、投票率の高さに粉砕されたのではないか。
「6月からこれまでの間に様々な犠牲を払った香港人にも感謝したい。彼らの犠牲が米国を動かした」
雨傘運動を率いた黄之鋒さんは11月28日、会見でそう語った。米国で香港人権民主法が成立したことを受け、香港島・エディンバラ公園で1万人規模の感謝集会が開かれた。
▽約1万人が参加した感謝集会11月28日(AP)
大統領の署名がなくとも12月3日までに自然成立する流れだったが、トランプ大統領はサインに踏み切った。優遇措置の評価・見直しに加え、人権抑圧に関与した当局者に制裁を科す条項も含まれる。
12月1日には「天滅中共」の幟と共に星条旗を掲げた感謝のデモ行進も催された。呪文詠唱のように平和を唱える国よりも、毀誉褒貶あれど他国民から感謝される国家を我が国は目指すべきだ。
▽星条旗を翻す感謝のデモ行進12月1日(時事)
一方、ほぼ同時に複数の「NO」を叩き付けられた中共サイドは、態度を硬化させる。譲歩する選択肢は初めから存在しない。
【“タイムラグ激怒”の理由は明快】
「誤った措置に対して必ず報復し、一切の悪い結果は米国が負うことになる」
中共外交部は11月28日、駐北京米大使を呼び付け、強く抗議すると同時に報復を宣言した。予想された展開だ。しかし、貿易交渉を睨んで、中共の反撃は今のところ弱々しい。
▽報復措置を発表する中共外交部の華春瑩12月2日(共同)
中共が12月2日に発表した報復は、米軍艦艇の香港寄港拒絶と米NGO活動制限という毒にも薬にもならない中途半端な2本柱だった。1枚のカードすら切っていない感じだ。
昨秋の強襲揚陸艦「ワスプ」に続き、今夏もミサイル巡洋艦などが寄港を拒まれている。米国にとっては英国領時代からの習慣で、寄港目的は兵員のR&R(休息と保養)だという。
▽香港に寄港した米第7艦隊旗艦4月(CNN)
活動制限の対象組織も、以前から中共がデモの黒幕と名指しするNED(全米民主主義基金)やワシントンに本部を置くNGOなど僅か5団体。いずれも支那本土では活動していない。
逆にリストから漏れる国際人権団体の方が痛い。因みに制裁対象のフリーダム・ハウスは「世界の自由度」番付で昨年度、日本をアジア1位に選出したNGOだ。我が国のメディアで紹介されることはない。
参照:大紀元’18年1月20日『世界自由度ランキング、日本はアジア1位 香港は後退=米人権団体』
「強烈に反対する。この法律はまったく必要ないし、根拠もない。外国による干渉だ」
▽唐突に怒る行政長官の林鄭月娥12月3日(HKFP)
香港行政長官の林鄭月娥は12月3日の会見で、そう吐き捨てた。何か時系列が狂っている印象だ。法律成立直後だった11月29日の会見では、憤慨する様子もなく、控え目に話していた。
ところが4日後には別人のように怒り狂う…二重人格でも憑依されたのでもない。及び腰の北京の代わりに、米国を糾弾するよう中共指導部に命令されたのだ。汚れ役である。
▽外遊先の会見では冷静だった林鄭月娥11月29日(ロイター)
立法府を占拠した台湾国ひまわり学運との比較で、香港には学生側の代表・交渉人が居ないことが指摘される。しかし実際、香港には市民・学生側どころか、政府側にも交渉窓口が存在しない。
全ての決定権を握る人物は北京にいる。林鄭月娥は中共指導部の操り人形であって意思を持たず、交渉も駆け引きも不可能。「対話の扉」は閉ざされているのではなく、最初から何処にもないのだ。
▽抗議者が排除された香港中心部12月1日(RFA)
これが“一国二制度”香港の悲劇である。
【期限付きの「自由と民主主義」】
最悪の事態に至る材料は悉く揃っていた。徹底抗戦を叫ぶ一部学生とキャンパスを完全に包囲した制圧部隊。燃え上がる炎に反比例して食糧は尽きて行く。
▽炎と黒煙に包まれた香港理工大11月17日(AFP)
約1週間に渡った香港理工大の攻防は、周辺を含め1,400人近くが拘束されたものの、流血の大惨事は免れた。双方に死者が出なかったのは、学生側が暴力的ではなかった為だ。
「山の斜面にある中文大より、市街地にある理工大の方が警察にとっては好都合だった」
大学関係者は、そう語る。強硬派の学生がアジトに立て籠もったと報道れたが、校内に居た学生らが追い詰められ、脱出路を塞がれた側面が強い。校庭に描かれた「SOS」は、文字通りの意味である。
▽香港理工大校庭のメッセージ11月22日(AFP)
完全武装の警官隊に抗える強力な火器など誰も持っていない。香港当局は発見した“武器”をメディアに公開したが、大半が火炎瓶で、1丁の改造ガンすらなかった。
「香港にビン・ラディンはいない」
学生を擁護する人権団体の主張は正しかった。仮に学生側が武器を所有し、警官隊に犠牲者が出たなら、構内は六四天安門広場と化した。しかし中共がテロリストと呼ぶ者達の拠点は、この程度だったのだ。
▽理工大の捜索で回収された火炎瓶11月(ロイター)
キャンパスの惨劇は回避された。それでも抗議者が“包囲”されている現状に変わりはない。反中共に立ち上がった抗議者は遅くとも28年後には漏れなく「危険分子」に分類され、弾圧対象と成り果てる。
米議会の有志も、国際的な支援団体も「香港の自由を守る」と言う。だが、予め最終期限が決まっている「自由」などあるのか。果たして、それは自由と呼べる代物なのか?
▽無人となった理工大キャンパス11月22日(AP)
中共政権を崇め、平和の守護者と讃える勢力には無意味な問い掛けだろう。しかし、チベットや東トルキスタンの実情に少しでも触れた者は、連中が冷酷で残忍で容赦がないことを知っている。
一党独裁の全体主義が、やって来る。可能性の話ではなく、確実に来るのだ。非道国家に併呑される年月日が既に決まっている…中世や古代にも経験がない。歴史上初めての異常事態である。
▽香港理工大周辺で佇む学生11月19日(ロイター)
どうすれば、確定している「未来の危険分子」達を救い出せるのか。それもまた人類が歴史上初めて突き付けられた問題だ。最善策を模索する余裕も、躊躇する時間もない。
期限付きの自由と民主主義。予約された恐怖支配。香港の終末時計の針は、今この瞬間も、止むことなく進んでいる。
〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
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↓

参照:
□Hong kong Free Press
□櫻井よしこ公式ブログH23年3月5日『毎年10万件の暴動が起きる中国 胡主席が幹部に強調した規制徹底』
参考記事:
□RFA12月2日『Riot Police Win Back Control of Protest Town in China's Guangdong』
□SCMP11月30日『Chinese city halts crematorium plan but stand-off between police and protesters goes on』
□大紀元12月2日『香港民主化運動の影響か 広東デモで「時代革命」叫ぶ住民 当局譲歩』
□産経新聞12月1日『中国本土・広東省で住民と警察衝突 香港混乱飛び火か 関連書き込み次々削除』
□ZAKZAK12月3日『香港デモ再燃! 中国本土に波及、中国警察は対テロ訓練で“威嚇”』
□JB Press11月28日『中国化にはっきりノー!北京の裏をかいた香港市民(福島香織)』
□AFP11月21日『地面に「SOS」 香港理工大、強硬派数十人の籠城続く』
□産経新聞12月2日『【緯度経度】香港デモに仕組まれた罠 藤本欣也』
□ニューズウィーク12月2日『香港で民主派デモが再開、警察の催涙ガス攻撃も復活』
□産経新聞11月25日『周庭氏、笑顔なき決意「一票一票は市民が流した血」』
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