絶望監獄“暗い部屋”の真実…邪悪な人体実験疑惑も浮上

各国のウイグル支援者を震撼させた新証言の余震が止まらない。収容所の“暗い部屋”で毎夜行われる女性凌辱、拷問…そして謎のワクチン強制注射など新たに人体実験の疑いも浮上した。
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「その監房に居た多くの女性が正気を失っていました」

東トルキスタンの強制収容所から生還したウイグル人女性の証言が世界に衝撃を与えた。英BBCが2月2日、被害者の実名・顔写真付きで特大のスクープを放ったのである。

「女性は毎晩、監房から連れ出され、覆面をした漢族の男にレイプされました。そして拷問の後、複数の男に同じように襲われるのです」

そう語るのは、ウイグル女性のトゥルスネイ・ジアウドゥン(Tursunay Ziawudun)さんだ。彼女は過去2回拘禁され、自らを含む女性収容者の生き地獄を目の当たりにした。
▽新たに証言したジアウドゥンさん(BBC)
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「私にとって決して忘れられない最大の傷跡です。看守は電気棒を持っていました。最初は何か分からなかったのですが、看守はそれを私の性器の中に押し込み、電気ショックで拷問したのです」

収容所の各監房には14人の女性が詰め込まれていた。鉄格子付きの窓と洗面器、トイレは床の穴だった。ジアウドゥンさんは初め、夜な夜な女性が連れ出される理由が判らなかったと語る。

「ある少女は“暗い部屋”に連れて行かれて戻った後、何も話さず、放心状態で宙を見つめていました」
▽収容所情報を閲覧するジアウドゥンさん(BBC)
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監房から夜に連れ去られた女性の何人かは、再び帰ってくることはなかった。別の証言によると電気ショックは4種類あり、女性が拷問死するケースもあったという。

「監視カメラを張り巡らせ、死角をがないことを確実にせよ」

’19年末に外部流出した各収容所への指示文書には、そう記されていた。ジアウドゥンさんが言及する“暗い部屋”とは、明るさを意味しない。当局の許可を経た監視カメラの唯一ない特別室を指す。
▽絶望監獄から生還したジアウドゥンさん(FOX)
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凌辱の限りを尽くされながらも絶望監獄から生還したウイグル人もいる。その1人であるジアウドゥンさんは特殊な部類に入る。夫がカザフスタンの国籍を持つ外国人だったのだ。

2度目の収容から9ヵ月を経た’18年暮れ、カザフに配偶者や親戚が居る他の収容者と共に解放。そしてウイグル支援団体の助力で渡米。現在はワシントンD.C.郊外でひっそり暮らしている。

【渾身の証言を衛星写真で裏付け】

BBCは単に証言を採取するだけではなく、渡航記録や移民登録関連文書との照合など並行して裏取にも励んだ。調査報道の基本ではあるが、更に衛星写真による収容先の解析も行なった。

ジアウドゥンさんは夫と共に5年程カザフで暮らし、’16年に東トルキスタンに戻った際、約1ヵ月間拘禁される。旅券を中共当局に奪われ、夫と離れ離れになった後、2回目の連行が起きた。

「女性達はジュエリーを没収され、私はイヤリングを引き千切られました」
▽過酷な体験を語るジアウドゥンさん(BBC)
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収容先は同じ東トルキスタン西部キュネス地方の監獄だった。ジアウドゥンさんは収容施設が巨大化していることに気付く。ゲートには大勢の被拘禁者を「ノンストップで降ろす」車両が並んでいたという。

BBCはキュネス地方の収容所を特定。’17年と’19年の衛星写真を比較し、数倍の規模に膨れ上がった事実を暴き出した。画像の上部にある大きな建物は工場と見られる。
▽キュネス地方収容所の比較17年と19年(BBC)
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「男達は若くて美しい女性を選んだ。私の役目は女性の服を脱がし、手錠を嵌めることでした」

18ヵ月に渡り囚われたグルジラ・アウエルハンさんは、収容所内で「組織化されたレイプ」に協力させらたと明かす。彼女はカザフに居住権を持つが、家族に会う為に訪れた東トルキスタンで連行された。
▽故郷の村で暮らすアウエルハンさん(BBC)
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アウエルハンさんは’19年1月に強制労働の実態を告発した人物だ。1日100円未満の賃金で奴隷工場ではなかったが、地方都市の一般工業団地にも収容者の“派遣労働”が拡大している事実が波紋を広げた。

参照:AFP’19年3月27日『工場で「再教育」 新疆でイスラム教徒に強制労働 中国』

「女性の悲鳴は建物全体に響き渡りました。昼食時や“授業中”にも時折、聞こえてきたのです」

そう話すウズベキスタン系のセディックさんは、管理側に相当する北京語教師として絶望監獄に着任した。勤務中に施設内での性暴行の噂を聞いたセディックさんは、女性看守に真相を尋ねた。

「噂は本当です。もうレイプは文化になりました。集団での暴行です。それだでけはなく、拷問の末に感電死させています」
▽欧州に亡命したセディックさん(The diplomat)
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その日の夜、セディックさんは恐ろしさの余り一睡もできなかったと回想する。また彼女は、強制収容所の内外で進むウイグル女性の一斉不妊手術と強制避妊の貴重な証言者でもある。

「私は横になって足を広げさせられ、デバイスが挿入されました。それは酷く暴力的でした」(20年8月17日付The diplomat誌)

多くの若いウイグル女性と共に、IUD(子宮内避妊器具)強制装着の被害を受けたのだ。彼女は、ジェノサイド認定の要件を完全に満たす特定民族根絶政策の貴重な実体験・目撃者として再注目されている。

【証言続々 中共伝統の“公開凌辱”】

「我々が想像していたより遥かに深刻なレベルで性的虐待と拷問が行われていたを示している。ウイグルでの残虐行為が始まって以降、最も恐ろしい証拠で、内容も信頼でき、証言も詳細だ」
▽エイドリアン・ゼンツ博士'20年(BBC)
BBC20年2月文書を検証したエイドリアン・ゼンズ博士は、本物だと信じていると話す.jpeg

米VCMF(共産主義犠牲者記念財団)上席研究員で独出身のエイドリアン・ゼンツ博士も驚きを隠せない。博士は昨年BBCが入手した収容所関連の文書を検証し、お墨付きを与えたウイグル問題の第1人者だ。

この文書は全137頁、収監者3,000人以上の情報を列記。南部カラカシュ地方の311人を主要な監視対象者と位置付けていたことから「カラカシュ・リスト」と呼ばれる。
▽“反党分子”情報を網羅したカラカシュ・リスト(BBC)
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「数年前にベールを着用していた」

ヘルチェムという女性が収容所送りになった理由は、それだけだった。このリストから当局が情報集積システムを元に拘束している可能性が浮上。そこではバイデン親子の監視カメラも“大活躍”した。

ゼンツ博士が高く評価したのは、ジアウドゥンさんの詳細な体験・目撃談だ。元北京語教師らの証言は、公開済みの情報と一部重複する。それでも女性暴行に絞ったBBC特報は衝撃的だった。
▽往時のウイグル人母娘(豪州紙file)
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「看守たちは少女や若い女性を選りすぐって連れ去った。その後、100人程の拘禁者の前で看守たちは代わりがわりレイプした」

そう証言する女性は、カザフスタン系のサイラグル・サイベイさんだ。収容所の教師役だった彼女は離職後の’18年5月、家族とカザフに赴いた際、不法入国容疑で逮捕される。

「中共当局は『施設』と呼んでいますが、実際は山の中の監獄です」

カザフ国内の法廷で、当時、情報の少なかった強制収容所の実態を暴露。逮捕から2ヵ月後、独紙が詳細を報じたことで一躍脚光を浴びた。問題発覚初期の貴重な証言者である。
▽カザフで拘束されたサイベイさん’18年(SCMP)
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法廷証言の後、サイベイさんに関する新たな情報は伝えられなかった。習近平指導部は東トルキスタンから脱出する人々の拘束を強化。隣接国にも工作員を潜入させ“ウイグル人狩り”を進めた。

関連エントリ:H31年2月6日『国境を越えるウイグル人狩り…証言者が怯える非情の報復』

安否が心配されたが、杞憂だった。昨年3月、米国務省の「国際勇気ある女性賞」を受賞し、ワシントンに招かれた。トランプ政権が人権問題、とりわけウイグル弾圧に関心が高かったことを物語る。
▽授賞式のサイベイさんとメラニア夫人ら3月5日(AFP)
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一方、サイベイさんの証言が3年前だったことに慄く。この間、国際社会は効果的な対策を講じられなかった。ジェノサイドは範囲を拡げ、犠牲者は増え続けている。

【謎ワクチン注射も 狂気の人体実験疑惑】

「国際社会は、今こそ事態の真相を解明し、残虐行為を止め、弾圧されている人々の尊厳を回復するために連帯しなければならない」

超党派の対中政策に関する国会議連は2月9日、BBCのスクープ新証言を受け、声明を発表した。同じく超党派に発展したウイグル議連と共に機敏で活発な動きが続く。
▽ウイグル議連のヒアリング2月10日(産経)
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「収容所でのウイグル女性らに対する組織的なレイプや性的虐待の直接の証言を含む報告に深く憂慮している」

報道官レベルであったが米国務省は2月3日、BBC特報に関するコメントを発出。英議会や豪州のペイン外相からも徹底的な調査を求める声が上がった。ジアウドゥン証言のインパクトは大きい。

一方、他社のスクープとは言え、内外メディアの取り扱いは低調だ。後追いでジアウドゥンさんを取材したのは現時点でFOXだけだった。彼女はワシントンD.C.在住で、米大手は出し抜かれた格好である。
▽取材を受けるジアウドゥンさん(FOX)
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そして2月11日に中共当局がBBCワールドを放映禁止にしたことで、焦点がぼやけてしまった。英放送通信庁による中共宣伝機関CGTNの放送ライセンス停止で、報復合戦が始まったとする論調だ。

しかし中共当局は「ウイグル政策についての明らかな虚偽を拡散」と明確に理由を示している。BBCスクープ証言は北京を震撼させたのだ。CGTN追放措置は枝葉であって幹ではない。
▽中共の海外向けプロパガンダ機関(DW)
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「BBCはウイグル族の『再教育施設』に関して、人権弾圧や集団性的暴行があったなどと報じ、中国側が反発していた」(2月12日付け日経)

本邦メディアもスクープ報道に触れるが説明は短く、英中の対立に重きを置く。トランプ政権による個別具体的なCCP糾弾が、抽象的な米中対立として論評されたケースと似ている。

ジアウドゥンさんの証言は、上記の日経新聞のように僅か10数文字で解説で終わるようなものではなかった。2月2日付けのBBCスクープ本編が日本語版から漏れていることが残念だ。
▽グルジャ地方の収容所潜入映像(BBC=Bitter winter)
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「ジアウドゥンさんは数ヵ月に渡り、理由が分からない診察を受け、薬を飲まされ、15日毎に吐き気と痺れを催す『ワクチン』を強制的に注射された」(2月2日付けBBC)

BBCは、そうした行為を「医療介入(medical interventions)と穏当に表現するが、被拘禁者がモルモット化された可能性が高い。つまり、新たに人体実験の容疑が浮上したのである。
▽支援者と暮らすジアウドゥンさん(BBC)
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東トルキスタン国内の収容所は、昨夏までの調査で380ヵ所を突破。し内部で「何が行われているか」を問う時期はとうに過ぎた。中共指導部を締め上げ、追い詰め、全員を救い出すことが急務だ。

推定で最大200万人…ウイグル人の老若男女、そしてムスリム系住民が今この瞬間も生き地獄で喘ぎ、藻掻き苦しんでいる。



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【side story】

中共の宗教弾圧問題に特化した「Bitter winter」の強制収容所潜入映像が、漸くBBCやFOXテレビで引用されるようになりました。決定的な映像が無視される状況に嘆いていましたが、2年以上が経ち、日の目を見た格好です。
参照:Bitter winter’18年11月15日『ウイグル族を対象とする強制収容所は「学校」なのか、刑務所なのか?写真や映像を含むBitter Winter独占リポート』(記事内に潜入映像も)

参考動画:


参考記事:
□BBC2月2日『’Their goal is to destroy everyone': Uighur camp detainees allege systematic rape』
□FOXニュース2月12日『BBC banned in China after explosive report on Uighur rape and the UK blocking its state-run network』
□BBC2月4日『Uighur camps: US, UK governments condemn reports of systematic rape』
↓日本語版記事
□BBC2月5日『ウイグル女性、収容所での組織的レイプをBBCに証言 米英は中国を非難』
□産経新聞2月8日『ウイグル族施設で「性的暴行」の英報道、国際調査求める声強まる』
□AFP2月5日『米英が断固たる行動約束、ウイグル人女性拷問の調査報道受け』
□産経新聞(共同)2月6日『新疆の収容施設で性的暴行 中国に批判殺到』
□毎日新聞(共同)2月6日『中国新疆ウイグルの収容施設で「性的暴行」 英BBC報道』
□米ABC2月5日『Uyghur advocates speak out after horrifying accounts of rape and torture in Xinjiang camps in China』
□Bitter winter2月9日『Rape in Xinjiang Camps: Male Inmates Are Victims Too』
□The diplomat20年8月17日『Confessions of a Xinjiang Camp Teacher』
□BBC’20年2月18日『ベール着用やサイト閲覧で収容 中国のウイグル政策示す文書か』
□大紀元’18年7月20日『新疆、カザフ族2500人収容中 再教育施設元職員が法廷で暴露』
□日経新聞2月12日『英BBC、中国で放送禁止に ウイグル問題で対立』

この記事へのコメント

金 国鎮
2021年02月15日 21:30
アメリカが何を言おうとアメリカが中央アジアのウイグル族に対して取りうる選択は殆どない。
先の戦争でアメリカは中央アジアを無視した。
アメリカ議会の反応、日本の反応等中国にとってはどうでもいい。

唯一の問題は中ロ国境を境にして多くのトルコ系民族がいる。
彼らが動けば中国はロシアと衝突して追い込まれる。
既に中国は中国国内のカザフ系民族にヴィザ発給を認めるようになった。
これはロシアの力だろう。

ロシア国内では信仰の自由が保障されているがこれがあまりよく理解されてはいない。
ウイグル族のモスクを破壊するような行動を中国が続ければ中国は
必ずやロシアと対立していくだろうがどのような場合でアメリカ・日本とEUは中央アジアに干渉できない。
これについてはプーチンは習近平より強硬だ。

もしロシア以外に中国に何かができる国があるとすればトルコとトルコ系民族の集団である。
ロシアがシリア政府軍を助けて英米諸国をシリアから軍事的には
排除したことが記憶に新しい。
どちらにしても中国が漢族の中国であることがはっきりとしてきた。
次は内モンゴル・中国東北である。
中国東北で中国共産党が足をすくわれば再び中国は内乱に向かうだろう。

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