封鎖都市上海の飢えと渇き…災いを招くゼロコロナ政策

上海に急派された輸送機の積荷は軍部隊だった。感染死累計0人でも終わらない2,500万人都市の封鎖。習近平ご自慢のゼロコロナ政策が災いとなって降り掛かる。
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「上海ではもはや現金を使う人が珍しがられる状況です」

偽札の横行や政府による行動管理といった負の側面を度外視し、支那のキャッシュレス化を称賛する評論が後を絶たない。なるほど、最先端の商業都市・上海で現金は絶滅しているようだ。

「ある人はビーフパテと米や小麦粉を交換し、高級タバコ2箱と牛肉を交換する者もいた」

支那社会で影響力を持つとされる週刊誌が、最新の上海事情を伝えた。一部の集合住宅で盛んに行われる物々交換。確かにキャッシュのやり取りはない。
▽僅かに食材が残る上海のスーパー3月29日(RFA)
僅かに食品が残る上海のスーパー3月29日(RFA).jpeg

過激なレベルの都市封鎖が続く上海市は、とうに限界点を突破し、餓死寸前との悲鳴が響く。外出禁止令を破って商店に走ってもシャッターが開いているとも、棚に食べ物があるとも限らない。

「国際的な大都市で市民が食べ物を買えずにいるなんて、多くの人は信じないだろう」

SNSでは怨嗟の声が渦巻く。市当局は封鎖措置に伴い配給を始めたが、告発者によれば2週間で1回届いた箱には卵1個とビスケット…配給ゼロの“限界集落”も点在する模様だ。



大型スーパーと見られる店では、大勢の若者がドアをこじ開けて物品を略奪する光景もあった。生活物資の争奪戦でカオス状態に陥ったのは、感染者の隔離施設だという。
▽隔離施設内での物資争奪戦4月上旬(SNS)
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転入・転出が多い人口2,500万人都市を当局が管理することなど土台無理だ。配給対象は外国人や都市戸籍の所有者が中心で、出稼ぎの農民工はカウントから漏れている可能性が高い。

ロックダウンが長期化する中、既に餓死者が出ていることは確実だが、それでも「感染死なし」を強調するのが中共のゼロコロナ政策である。

【スマホ撮影OKの上海ナゾ仕様】

パレットと段ボールを組み合わせてベッドを作り、商品を枕に寝る…上海のショッピングモールで撮影された写真が話題になった。感染者が1人確認された為、当局が客ごと店を封鎖したのだ。
▽スーパー内に閉じ込められた客1月11日(SNS)
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これが始まりだったと言える。上海に於ける感染拡大の開始ではない。検閲を突破した証拠写真が海外で拡散されるという当局が恐れていた事態の始まりだ。

上海感染爆発の特徴は、中共指導部にとって不都合な画像・動画が溢れ返り、外国メディアが食い付いていることだ。年初の西安や天津、北京の感染者増加とも趣きが異なる。
□閲覧注意:ワンちゃん撲殺映像(1:30〜)含む


白い防護服を着た集団が市民を激しく暴行する。強制隔離に関連するシーンの多くが、集合住宅の上層階から撮影され、SNSで拡散された。過去にも例があるが、今回は量が違う。

そして最近では、市民が防疫職員を集団で襲う逆のパターンも出現し始めた。白装束軍団には公安も含まれるが、お構いなしに殴る蹴る。4月14日には暴動寸前の大規模抗議も確認された。
▽防疫要員を糾弾する大群衆4月14日(SNS)
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上海支局の特派員は現場動画の大量流出について、当局の削除作業が追いつかなくなっていると分析する。自慢のAI検閲でも制御が難しいのだ。加えて、支那国内の標準とは異なる状況も散見される。

上海東部で4月14日、住民と公安が激しく衝突。SNSにアップされた動画を海外メディアが一斉に報じた。映像を見ると、トラブルをスマホで撮影している住人が複数写り込んでいる。
▽公安の暴行を撮影する複数の女性4月14日(SNS)
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公安が最優先する仕事は撮影者の拘束だ。かつてチベットで相次いだ焼身抗議が、ある時期から映像の流出が完全に止まる。理由は付近に居る者全ての携帯電話を軒並み強奪するようになった為だった。

弾圧対象の異民族と漢族の違いなのか。公営マンションに住む上海人に遠慮しているとも思えない。撮影を野放しにする一方、抗議する男性は通常モードの手荒な対応だ。

【感染爆発香港の細やかな反乱】

習近平指導部が打ち出したゼロコロナ政策の核心は、外部に漏れる不都合な情報のゼロを意味する。始まりの武漢では、徹底した情報遮断で、感染者数をCCPのコントロール下に置いた。

最初の綻びは虐殺五輪だった。開幕前に感染者数を上積みしていた北京は2月9日に「市中感染ゼロ達成」と成果を強調。その影で五輪関係者の感染は509人に上った。
▽閉会式の習近平とバッハ2月20日(共同)
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誰もが中共が公表する数字を疑う大幅な格差だった。次いで2月中旬から香港の感染爆発が始まる。僅か1ヵ月で香港人の10%相当が感染し、死者も一気に7,000人を超えた。

隣接する深圳市でも俄に感染者が増え始めるが、1日当たりの上限が決められていたようで100人には達しない。深圳の居住人口は香港の2倍以上で、当局の感染者隠蔽は明らかだった。
▽香港の臨時隔離施設3月11日(AP)
香港の臨時隔離移設3月11日AP通信.png

香港の防疫政策は中共が国安法設置で介入する以前のルールに従っている。衛生当局が発表する数字は、党が指定する上限に縛られない。同時に香港は、中共が誇示する全住民PCR検査にも唾を吐き掛けた。

「これからの3ヵ月がパンデミック対策で極めて重要だ」

行政長官の林鄭月娥は2月22日、緊急会見を開き、香港全市民のPCR検査実施を発表した。拒否した場合には罰則を科す強制的な措置である。
▽全市民PCR検査を予告する林鄭月娥2月22日(地元紙)
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ところが3月21日になって一転、全市民PCR検査の中止を表明した。専門家から効果に疑問の声が上がり、経済界の反発も強かった為とされるが、本当の理由は違う。

全住民PCR検査は、当局の完了宣言後に1人でも「受けていない」と告発する者が現れれば破綻する。言論統制がまだ完全ではない香港の場合、その1人が出現する可能性が高かったのだ。
▽全住民PCR検査期間の天津市内1月9日(AP)
新型コロナウイルスの検査を受けるために並ぶ住民たち=天津市で2022年1月9日AP.jpg

武漢1,200万人、天津1,400万人の全住民PCR検査を速やかに実施したと中共は宣伝する。10分程で結果が出る抗原検査のスクリーニングではなく、1検体当たり数時間のPCR検査である。

中共は屋外でのPCR検査風景を熱心に広報するが、寝たきり老人の場合は係員が1軒1軒訪問しなければならない。検査用の精密機器を数十万台用意したとしても物理的に不可能だ。
▽PCR検査で行列する上海市民3月11日(AP)
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香港は全住民PCR検査の嘘が暴かれるのを未然に防いだとも言えるが、中共のゼロコロナ政策に反旗を翻し、経済活動を優先した。結果、林鄭月娥は4月4日、再選を断念し、引退に追い込まれた。

【中共ゼロコロナ政策の自縄自縛】

「もし新型コロナ対策でメダル贈呈があるなら、我が国は金メダルだ」

習近平は4月8日に開かれた虐殺オリパラ総括イベントで、そう放言した。珍しく気の利いたことを言ったつもりだろうが、中共はメダルどころか不正行為で失格だ。
▽表彰イベントでメダリスト迎える黄熊4月8日(ロイター)
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3月中旬の党幹部会議で、プーは経済活動への影響軽減を主張。これがゼロコロナ政策の緩和と受け止められた。しかし、実際は真逆の逆厳格管理徹底に舵を切った。

香港の細やかな反乱に影響を受けた上海の“緩やかな管理”はタイミングも悪かった。上海の分割ロックダウンは3月28日にスタートし、当初は数日内で終わる見通しだった。
▽街中で寛ぐ上海防疫スタッフ3月14日(AFP)
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中共指導部は4月2日に医療・衛生担当の副首相・孫春蘭を上海に送り込んだ。現場で孫春蘭は、受ける方もする方もやる気がないPCR検査場を目撃。報告を受けた習近平が激怒したという。

清明節の連休前に終わるはずだった上海のロックダウン解除は先送りになり、配給計画も崩壊する。そこで黄熊が上海に送ったのは食糧・生活物資ではなく、軍の大部隊だった。



上海人vs中共指導部の様相だ。既に上海市は軍の管理下に置かれたとの噂も広がる。習近平子飼いの党書記・李強は“罵声動画”の拡散を仕掛けられて権威失墜、失脚寸前だ。
▽仕込み臭い女に罵声浴びる李強4月11日(RFA)
RFA4月11日視察先で罵声浴びる李強.png

パンデミック初期に政争の予兆が見えた際、権力闘争の行方を左右するのは上海の感染拡大だと指摘した。2年を経て、期待が高まる状況が到来した。

対立劇の結末は、残念ながら習近平の勝利となるだろう。六四天安門モードで市民を轢き殺す必要はなく、感染者の公表数をゼロに近付けてロックダウンを全面解除すれば済む問題だ。
▽ロックダウン初期の上海市内4月2日(共同)
2日、都市封鎖が続き、人けのない中国上海市の西部(共同).jpg

ただし第2波、第3派の襲来には耐え切れない。国際事情に明るい生粋の都会人は、CCPの政策が先進国で主流となったウィズコロナ政策と駆け離れたものであることを知っている。

そしてプー政権が続く限り、愚かな防疫政策から転換できないと悟った。自殺者と餓死者が相次いでも今回の上海感染爆発で当局が認めた感染死は未だ0人。2,500万都市封鎖の見返りは何もない。
▽“ウイルス近平”のモニュメント’21年6月(file)
ウイルス近平のモニュメント’21年6月(file).png

ゼロコロナ政策の自縄自縛。武漢ウイルス拡散で世界を欺いた大罪人が、その報いを受けつつある。



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参考動画:
□新唐人TV4月10日『上海ロックダウン 防疫スタッフによる暴行事件相次ぐ』 
□Daily Mail4月15日『Shanghai lockdown: Desperate scenes as police ASSAULT protesting residents』 
□ANN4月12日『「おばさんにも一言言わせろ!」“ロックダウン上海”トップに住民詰め寄る』
□YouTube『饥饿的上海昌硕居民试图抢超市,跟白卫兵打起来了』(防疫要員を大勢で取り囲み襲う映像)

参考記事:
□現代ビジネス4月12日『上海とコロナと権力闘争…中国総書記「異例の3期目続投」目前に吹き始めた逆風(近藤大介)』
□クーリエ・ジャポン4月13日『中国・上海の隔離施設で食料を市民が奪い合う「カオスな光景」が撮影される』
□Japan In-depth4月6日『中国 コロナ再流行でまた住民から抗議』
□大紀元4月6日『『防疫スタッフによる暴行事件動画、ネットで相次ぎ流出=上海』
□BBC4月16日『上海ロックダウン、市民の抗議動画次々と拡散 検閲追い付かず』
□BBC4月13日『【解説】 上海のコロナ対策 ソフト路線をなぜ転換したのか』
□大紀元4月14日『中国軍、上海市に「医療チーム」派遣 専門家「事実上軍の管理下に」』
□看中国4月13日『中国上海、物資不足で物々交換』
□RFA4月11日『Seriously ill patients die after being denied hospital care in Shanghai lockdown』
□産経新聞4月13日『上海トップの李氏視察に住民不満訴え 人事に影響も』
□産経新聞4月13日『「文革式」ゼロコロナで混乱する上海 暴力に飢餓…渦巻く庶民の怒り』
□大紀元4月9日『「このままでは飢え死にする」上海市視察の孫副首相に住民から怒りの声』
□読売新聞4月5日『中国の「ゼロコロナ」にほころび…ロックダウンの上海、感染拡大止まらず』
□ZAKZAK3月28日『上海、2地域に分け都市封鎖 オミクロン株流行で過去最多更新、全住民にPCR検査実施』
□日経新聞3月21日『香港、コロナ全員検査を棚上げ 米英から乗り入れ再開へ」
□日経新聞4月13日『上海防疫に習近平氏「ダメ出し」 焦る首相候補・李強氏』
□CNN4月10日『習近平氏がゼロコロナを止められない理由』

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