ウイグル公安ファイルの斬撃…暴かれた200万人拘禁指令

“UNウイグル視察”直前に中共の極秘ファイルが公開された。強制収容所の実態を晒す生々しい写真と囚われた人々。200万人無差別拘束の指令書はジェノサイドの決定的な証拠だ。
スクリーンショット 2022-05-25 21.28.44.png

天井近くに鉄格子が見える。ここは地下にある監房だ。地元政府の幹部が演説するモニターを見詰める囚われた者達。彼らの前には棍棒を握った看守が並び、視線を背けぬよう厳しく監視する。
▽視聴強要される収容所のウイグル人'17年(Xinjiang Police Files)
テケス拘置所内の拘留者は、2017年に警備員が彼らを見ている間、地元の政治家によるテレビ演説.jpg

東トルキスタン北西部テケス地方に建設されたウイグル人強制収容所の内部写真が流出した。テケスはグルジャの南方に位置する古い街で、ジェノサイド本格化と同時に多くのウイグル人が“失踪”した。

「私は『虎の椅子』に座らされ、鉄製のワイヤーで鞭打ちされました」

昨年6月の英ウイグル法廷で、収監経験を持つウイグル人男性は、そう証言した。『虎の椅子』とは、中共が政治犯拷問で使う伝統的な拘束具だ。流出写真は、その拷問具の実在も暴いた。
▽「虎の椅子」を使用したテケス収容所の尋問'18年(XPF)
虎の椅子に.jpg

テケス収容所で行われる尋問。囚人服を着た左側の若者が「虎の椅子」に座らされている。手錠を掛けられ、身動きが出来ない。すぐ隣には盾を構えた公安が控える。

「15日おきに吐き気と痺れを催すワクチンを強制的に注射された」

性暴行に関する決定的な証言をしたウイグル女性、ジアウドゥンさんは、収容所内で密かに行われる人体実験の疑惑を提起した。今回流出した写真の中に“謎の注射”を裏付けるものがあった。
▽薬物投与の瞬間を捉えた写真’18年8月25日(XPF)
18年8月25日テケス看守所の注射.jpg

中高年の男性が手錠を嵌められたまま、右手に注射を打たれてる。背後には棍棒を握り締める漢族の看守。余りにも異様で、吐き気を催す写真である。

【公安極秘ファイル漏洩に中共震撼】

「これほど膨大で、一切フィルタリングのない警察内部ファイルを入手したのは初めてのケースです」

ウイグル問題の権威、エイドリアン・ゼンツ博士も驚きを隠せいない。流出写真・文書はカシュガル地方の公安ネットワークから匿名の第三者がハッキング手法で獲得し、ゼンツ博士に届けられた。

ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)を中心に先進各国の大手メディアが検証し、信憑性を確保。5月24日に一斉に報じた。我が国からは親中派の毎日新聞とNHKが参加している。
▽整列して唱和を強要される拘束者(XPF)
テケス看守所内部で撮影したとされる写真。監房のような部屋で整列する収容者らが何かを唱えるか、歌っているように見える。元収容者は中国共産党を称賛する歌を歌わされたと証言している。画像データでは2017年9月3日撮影.JPG

拘束されたウイグル人らが整列し、唱和する写真もあった。証言によれば、収容所内では共産党を讃える歌を強制的に歌わされたり、政治スローガンを復唱させられたりするという。

同様に、女性の拘束者が監房で何かの文書を読み上げているシーンも写されていた。左側に立つ看守もウイグル系の目鼻立ちで、見る者に複雑な感情を呼び覚ます。
▽テキスト読み上げを強要される拘束者(XPF)
スクリーンショット 2022-05-26 22.18.58.png

公安が収容者を激しく取り押さえる写真も多く流出した。これらについて、ゼンツ博士の検証チームは、スワットや武警が参加した演習の一環と解釈している模様だ。
▽収容者を取り押さえる公安チーム’18年9月(XPF)
テクス郡拘置所でセキュリティ訓練を実施.jpeg

当該ファイルが「drill」といった表記で区分されていた為と思われる。一部メディアは「収容者」と断定的に書く。訓練に実際の拘束者が参加させられた可能性も捨て切れない。

着目するのは、鉄格子の形状だ。伊メディア・Bitter Winterが’18年にカシュガル地方の収容所写真を入手した。それと比較した所、二重とされる鉄格子の造形は一致する。
▽独房エリアで取り囲む公安チーム’18年9月(XPF)
監房とみられる部屋の前に立つ当局者。右の男性の腕には「SWAT 特警(特別警察)」のワッペンが見える。撮影は2018年9月25日.png

長らく主流メディアに無視されたBitter Winterのスクープが日の目を見た格好だ。場所は異なるが、撮影日時も’18年の同時期。既に4年の歳月が経っていることに絶句する。
▽ グルジャ近郊イェンギイェルの収容所'18年(Bitter Winter)
Bitter Winter8月並ぶ鉄格子ドア.png

参照:Bitter Winter’18年11月26日『最新の独占映像:新疆のウイグル族を対象にしたもう一つの「教育による改心」のための強制収容所の実態』

そして、今回流出したのは画像ファイルだけではなかった。

【ウイグル200万人拘禁計画の指令書】

「数歩でも逃げようとした者は射殺せよ」

東トルキスタン全土を天井のない巨大監獄に変えた張本人は、そう言い放った。植民地総督に等しい新疆共産党トップ・陳全国が’17年5月28日の演説で語った言葉である。

「海外からの帰国者は片っ端から捕らえろ」
▽共産党大会に参列する陳全国'17年(ロイター)
共産党大会に参列する陳全国'17年(ロイター).png

現実が陳全国の命令を裏付けていた。’16年頃から里帰りした留学生が突如“失踪”する事例が頻発。更に海外で暮らすウイグル人の家族が相次いで人質となり、強制帰郷を余儀なくされる者も増えた。

この発言は「録音の文字起こし」と明記され、党会議での発言を正確に反映している。中共のジェノサイドを裁く際に、重要な証拠となり得るものだ。
▽ロンドン市内の陳全国“指名手配看板”20年(インド紙)
ロンドン市内の陳全国“指名手配看板”20年(インド紙).png

陳全国は昨年12月に新疆党書記の任を解かれたが、左遷・失脚ではなく、中央で重要なポストに就く可能性も指摘される。習近平の忠実な子分で、中共の権力闘争にも絡む。

「新疆南部には過激な宗教思想に染まった者が200万人以上も居る」

そう話したのは、香港弾圧のキーマンでもあった公安トップの趙克志だ。南部だけで少なくとも200万人の“ムスリム狩り”を行うと宣言。具体的な人数を示した異例の発言である。
▽カシュガル公安を視察する趙克志:中央’18年6月(大公報)
カシュガル公安視察する趙克志’18年6月(大公報).jpg

ウイグル人権団体は拘束者が「300万人規模」に増加していると訴える。親中勢力は証拠を求めるが、中共公安トップは’18年の時点で200万人の収容所送りを達成目標に掲げていたのだ。

「今回の訪問は、習近平総書記の新疆統治戦略に基づき、1月6日に与えられた重要な指示を遂行する為のもので、刑務所の管理と新疆生産兵団の南進開発に向けた調査を行う」
▽習近平の戦略伝える趙克志の演説文(XPF)
趙克志の演説概要.png

習近平のジェノサイド関与を記した「新疆文書」よりもダイレクトな表現である。趙克志は指導部から明確な指示を受けて東トルキスタンを訪れ、現地の弾圧機関に伝達した。

「機密」と刻印された文書には習近平の名前や「対新疆工作」の文字が踊る。決定的、そして致命的な文書の流出だ。部下に罪を着させて逃れることは出来ない。

【大虐殺“加担”のUN人権機関に痛手】

「ウイグル公安ファイル」の衝撃が広がる中、ジェノサイドの主犯に微笑みかける女が居た。UN補助機関、OHCHR(人権高等弁務官事務所)トップのミチェル・バチェレだ。
▽北京で習近平と歓談するバチェレ5月25日(共同)
共同525中国の習近平国家主席とのオンライン会談に臨むバチェレ国連人権高等弁務官=25.jpg

5月23日から支那入りしたバチェレは、懇談で王毅ら中共高官に愛嬌を振り撒き、失笑を買った。黄熊とのオフライン会談でも釘を刺され、実態解明とは無関係の個人旅行であることを印象付けた。

流出ファイル発表がバチェレ訪支のタイミングを狙ったものは明白だ。習近平指導部を強く牽制すると同時に、本当の人権問題には寛容なOHCHRの退路を絶つ目的がある。

「節度を保って接し、指定エリア内に入った場合は直ちに報告せよ」
▽外国要人の監視・歓待を指示する公安の通知(毎日)
毎日西部イリ・カザフ自治州公安局が州内の県や市の公安局に出した通知。現地で欧州の外交官6人の行動を監視するよう指示.jpg

流出文書の中に、視察に訪れた外国要人の対応マニュアルも含まれていた。’18年にEU外交官6人がグルジャに入る前、現地当局に管理・監視の徹底を求めた指示書である。

バチェレは中共が用意したセットを表敬訪問するだけで、実際の絶望監獄に突入することはない。十年一日のヤラセ視察だが、ファイル公表でOHCHRも苦しい立場に置かれた。
▽拘束されたウイグル人らの顔写真の一部(Le Monde紙)
Le Monde顔写真タイル.jpg

ひとつの笑顔も見付けられない…流出した拘束者の顔写真は実に2,884人。殆どが、カシュガル地方のコナシャハル(占領名:疏附県)で不当に捕らえられたウイグル人である。

カシュガルは初期のツアー日程でバチェレの旅行先に組み込まれた地域だ。この悲痛な大量の顔写真に触れず、カシュガルの「平穏無事」を世界に宣伝する蛮勇が彼女にあるのか?
▽広州で王毅と意気投合するバチェレ5月23日(AP)
AP通信523バチェレ国連人権高等弁務官(左)と記念撮影する中国の王毅国務委員兼外相.png

今回流出した写真の中で、多くのメディアが独りのウイグル少女をクローズアップしている。ラヒレ・オマールさんは父親の摘発に連座する形で拘束された。当時、14歳だった。
▽収容所に送られたオマールさん(XPF)
cde8f8dcd4ad069d3ef058289e25bf80.jpeg

もちろんテロとは関係なく、予備軍でもない。ただ、ウイグル人に生まれたという理由で監獄に押し込められたのだ。他の子供達や高齢者、若い男女も等しく、冤罪で囚われ、奴隷労働に駆り出された。

一部メディアはモザイクを施しているが、救出を目的とする以上、不要と考える。私達には見知らぬ顔写真の羅列であっても、ウイグル人にとっては重要な手掛かりだ。
▽家族の消息を知ったトルコ在住ウイグル女性5月18日(毎日)
毎日消息が途絶えた家族の写真を持つヌルシマングル・アブドゥレシッドさん=2022年5月18日.jpg

ファイルが公開されて以来、カシュガル地方の家族や親戚、友人を持つウイグル人が食い入るように顔写真を確認し、名簿を調べている。そして早くも両親や弟を発見したウイグル女性が現れた。

「居場所が全く判らないより、ずっと良い。小さな幸せがある」

健気な言葉の背後には、胸が張り裂けるような思いがあるに違いない。特設サイトに掲載された顔写真を1枚1枚検め、再認識する。ウイグル問題に対するスタンスは複雑に見えて実は単純である。
▽監房で身柄を取り押さえる中共公安’18年9月(XPF)
2人の収容者のうち1人が手錠をかけられ、壁に向かって座らされている。撮影は2018年9月25日.png

こうした無実の囚われびとを救う側に立つか、或いは、中共ジェノサイド陣営に味方するかだ。



最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります

banner1




参照:
□Victims of Communism Memorial Foundation(共産主義犠牲者記念財団)HP5月24日プレスリリース『VICTIMS OF COMMUNISM MEMORIAL FOUNDATION RELEASES ‘XINJIANG POLICE FILES’ PROVIDING CONCLUSIVE EVIDENCE OF PRISON-LIKE NATURE OF BEIJING’S RE-EDUCATION CAMPS』
□Xinjiang Police Files特設サイト
□毎日新聞『新疆公安ファイル』

参考記事:
□毎日新聞5月24日『「逃げる者は射殺」中国のウイグル族「再教育施設」内部資料が流出』
□AFP5月25日『新疆の内部資料が大量流出 収容所の「衝撃的」実態浮き彫りに』
□産経新聞5月24日『中国当局のウイグル族収容の内部資料、数万件が流出 独が調査要求』
□時事通信5月24日『中国幹部が脱走者射殺命令 習氏、ウイグル族収容所建設指示―独英メディア』
□ICIJ5月24日『The faces of China’s detention camps in Xinjiang』
□EL PAIS(スペイン)5月25日『Secret police files put a face to China’s repression in Xinjiang: Child prisoners and ‘shoot to kill’ orders』
□BBC5月24日『Xinjiang Police Files: Inside a Chinese internment camp』
□豪Skyニュース5月25日『China studies expert says President Xi Jinping 'personally commanded' for Uyghur detention camps to be expanded』
□The Jerusalem Post5月24日『Alleged Chinese abuse of Uyghurs revealed in massive leak - study』
□The Diplomat5月25日『Xinjiang Police Files Show Xi Jinping’s Personal Involvement in Uyghur Persecution』
□毎日新聞5月25日『新疆訪問の欧州外交官を監視 流出文書で判明 拘束し写真消去も』
□共同通信5月24日『新疆収容施設の建設、習氏が指示 自治区トップ「射殺しろ」』
□毎日新聞5月24日『「父は共産党員、テロなんて」収容者の家族訴え』
□AFP5月23日『中国当局のデータベース流出、拘束されたウイグル人の詳細明らかに』
□大紀元5月17日『ウイグル人約3万人拘束、流出の新疆警察データベース明かす=米VOA』

この記事へのコメント

金 国鎮
2022年05月28日 22:04
中国人は存在しない。
中国共産党が中国人を言うので中国人が存在している。
中国は漢人の国だ。
彼らは万里の長城内にすむ民族だ。
中国領内に住む多くの少数民族は果たして何ができるだろうか?

中国共産党が中国の政治権力を握るまでに彼らと共に或いはその以前に闘った漢人以外の民族は満州人・モンゴル人・朝鮮人のみだ。
彼らはいま中国領内で自冶州を持つだけではなくて、今も中国東北の軍を支えている。
従って、彼らには中国共産党は簡単に手が出せない。

中央アジアに住む少数民族に関心を持っているのはロシアに住む
トルキスタン・ウズベキスタン・カザフスタンなどの国々だ。
彼らはロシアの政治領域に住む。
プーチンが中国領内に兵を進めるならば中央アジアの民族は立ち上がるだろうが欧米を中心とする勢力を参加させてはならない。
決してだ。
ウクライナは欧米にひれ伏したスラブ民族だ。

ロシア東部の政治的独立又は中国東北の政治的独立がこの問題を
解決していくだろうが、日本と韓国は今もアメリカに従属している。
韓国軍はどうやら水面下で政治的独立を目指して軍事兵器の技術革新を急速に進めているようだ。北は核ミサイルのみだ。
南北の政治的和解は中国東北に政治変動をもたらし、それは漢人の中国とその他民族の国家群をユーラシア大陸に作るだろう。

日本と韓国の経済は東アジアの将来を決定するかもしれない。

この記事へのトラックバック