尖閣“特別軍事作戦”の伏兵…始動した中露連携情報戦
戦争とは違う特別軍事行動…ロシアの影響を受けた軍の新要綱を中共が策定する一方、プーチンは偽宣伝工作で習近平に学ぶ。中露が連携する情報戦は深化し、日台に危機が迫る。
7月4日早朝、ロシア海軍と中共海軍のフリゲート隻が魚釣島南西の接続海域に侵入した。尖閣を脅かす中露連携の異常な示威行動だが、我が国政府の反応は鈍く、疑問の余地が残るものだった。
「ロシア艦は悪天候を避けるために当該海域を航行し、中国艦はロシア艦の航行に対応してこのような航行を行った可能性もある」
▽会見する松野官房長官7月5日(時事)
松野官房長官は5日午前の定例会見で、好意的な解釈に終始した。台風4号の影響で時化る中、ロシア艦が誤って接続水域に入り、中共艦はそれを監視する目的で追うように侵入したとの見方を示したのだ。
海自の偵察活動によると、露海軍ステレグシチーII級フリゲートは4日午前7時過ぎから1時間余り尖閣沖の接続水域に侵入。中共ジャンウェイⅡ級フリゲートは約6分間、接続水域内に航行した。
▽中露海軍艦艇が同時侵入した海域(読売)
中共艦艇が露艦を「監視する」という解釈が飲め込めない。政府は中共に対し「重大な懸念」を伝えて抗議する一方、ロシアには該子ルートを通じ、事実関係を確認する「関心表明」を行うに留まった。
荒天による退避行動との見方は防衛省側から示されたものだが、早計だった。ロシア海軍フリゲートは4日夜、駆逐艦など2隻を伴って久場島沖の接続水域に再び侵入する。明らかな挑発行動だ。
▽東シナ海北上する露海軍フリゲート7月5日(統幕監部)
中露艦艇の尖閣接続海域侵入は平成28年6月にも起きている。その際、安倍首相は官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置。防衛省も緊急幹部会議を開き、情報収集と分析に当たった。
▽前回の中露艦艇侵入時の号外(産経file)
この時と比べると温度差が激しい。現在、ロシア海軍は戦時態勢で黒海では実弾を用いた砲撃を繰り返す。平時だった6年前とは違い、同国の軍事行動に細細心の注意を払う必要がある。
しかも、侵入した駆逐艦やフリゲートを含むロシア艦隊は6月中旬から東北・千葉沖を航行し、今月2日には石垣島沖を通って東シナ海に抜けている。ウクライナ戦争は遠い欧州のページェントではない。
【慣例破った中共軍の台湾挑発航行】
「可能性は考えられるが、断定的に言うことは出来ない」
中露艦隊の尖閣接続水域侵入について岸信夫防衛相は7月5日、そう会見で語った。連携した行動ではなく偶発的との見方に傾く。一方、中共軍の動きには警戒感を強める。
「海空戦力による南西諸島や台湾周辺の軍事活動が益々活発化している」
▽会見する岸防衛相7月5日(FNN)
沖縄「慰霊の日」にあたる6月23日、中共海軍艦隊が沖縄本島と宮古島の間を抜けて北進。その前々日、ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦「西安」とコルベットは与那国島西方を抜けて太平洋に向かった。
防衛省の発表は台湾国内で大きな注目を集めた。従来、中共艦艇は太平洋に出る際、沖縄本島と宮古島の間を抜けるか、遥か西方のルソン海峡を航行するのが通常だった。
▽台湾・花蓮沖を航行した中共海軍「西安」6月24日(統幕監部)
しかし、この慣例は破られた。中共艦艇が航行した海域は台湾国東部の都市・花蓮から僅か150kmしか離れていなかった。台湾国民を強く刺激するルートである。
「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」
▽南独で開催されたG7サミット6月27日(AP)
6月末のG7エルマウ・サミットでは、昨年に引き続き、首脳宣言に“台湾海峡”が盛り込まれた。しかし、台湾周辺で活発化する中共軍の具体的な動きが我が国で報道されることは少ない。
そして、中共海空軍の挑発的な行動と歩調を合わせ、尖閣を含む先島諸島周辺で不審な動きを続けるロシア海軍。我が国は、この不気味な軍事連携を国際社会に向けて強く発信すべき立場にある。
▽列島を1周した露海軍艦隊の航路(統幕監部)
岸防衛相が見解で示した通り、南西諸島方面における中露海軍の連携に確証はない。だが、無秩序・無計画な両軍の行動が偶然折り重なった結果ではないだろう。
昨年10月、中露海軍の合同艦隊10隻が津軽海峡・大隈海峡を抜け、我が国に衝撃が走った。更に翌11月、中露空軍の爆撃機4機が編隊を組んで東シナ海上空を旋回し、宮古島沖を抜けて飛行した。
▽長崎沖を航行する中露合同艦隊R3年10月23日(防衛省)
ウクライナ東部国境沿いにロシア陸戦隊9万人の集結が明らかとなり、電撃侵攻が囁かれ始めた頃である。この時。既に中露の軍事連携は次のステップに進んでいたのだ。
【海上民兵が出撃する特別軍事作戦】
「新時代の軍隊の使命、任務を有効に履行する為に重要な意義がある」
中共国防部のスポークスマンは6月30日、会見で軍の新たな行動規定に触れ、自画自賛した。新たな規定とは、習近平の署名を経て施行された「非戦争軍事行動要綱」だ。
中共宣伝機関は概要を発表したが、6章59条からなる全文の内容は不明で、様々な憶測を呼ぶ。台湾国内では、グレーゾーンを拡大して台湾侵攻の隠れ蓑にするのが目的だとの声が上がる。
▽宣伝機関が伝えた新要綱の概要6月13日(NHK)
ロシアはウクライナ戦争を「特別軍事作戦」と呼称し、中共も従った。非戦争軍事行動は米軍が90年代に発案した概念とされるが、台湾国の軍事アナリストは、2月の侵攻と無縁ではないと明言する。
「直接関連があるだろう。ロシアはウクライナ戦争を特別軍事行動と定義し、侵略ではないとしている。その目的は反ナチズムを主張する為だ」
南シナ海や台湾での軍事活動を国内法的に「非戦争」と位置付け、国際社会に強弁する腹積もりか。強制収容・大虐殺を“人民戦争”と呼称するウイグル弾圧とは対照的にも見える。
▽ウルムチに集結する武警の装甲車’13年(ロイター)
ゼロ・コロナ政策の恒久化で反発が頂点に達した際、習近平陣営が反対勢力を一網打尽にする為の布石と見る分析もあるが、楽観的だ。民衆鎮圧は中共のルール上、水平射撃の皆殺しで対処できる。
新要綱は、まず台湾国侵攻を念頭に置き、南シナ海での衝突・局地的な戦闘を想定したものと考えられる。中共“海の侵略”では正規軍出動の前に海上民兵が捨て駒の役割を果たす。
▽比領海に侵入した中共海上民兵の船団’21年(AP)
「ベトナム・フィリピン・マレーシアその他の国の侵害に対処する為、民兵漁船を組織し、海上での人民戦争を優位に進める」
広東省党常務委員会の会議音声が外部にリークされた。中共軍南部戦区の幹部も参加した最高機密を含む極秘会議だ。約1時間に渡る綿密で詳細な討議。こうした党の重要会議が暴露された例は過去にない。
「14万人の軍人に“特別な才能”を加え、953隻の船舶、1,653セットのドローンを活用し、台湾海峡での決戦を支援する」
▽内容が暴露された広東省の極秘会議5月14日(曾錚)
広東省の党組織による後方支援や都市防衛に主眼が置かれていることから、軍事力の展開や作戦に関する説明は乏しい。だが、全文不明の新綱領よりも具体的で、決戦を間近に控えた緊迫感に満ちている。
【中共に学んだ露軍ウクライナ情報戦】
流出した広東省CCP幹部と南部戦区の極秘会議は5月14日に開かれた。それが約1週間後にYouTubeにアップされる。スッパ抜いたのは在米メディアの「路德社」だ。
音声データの入手経路は明かされていない。余りの早技だったことや、公開元が郭文貴に近いことから主流メディアは無視。大紀元も概要が伝えたが、独自に信憑性を確保していないと断る。
会議内容もロジ面に偏っている為、軍事系からの食い付きも悪い。その中、全ての音声を英語に翻訳・書き起こした亡命支那人の曾錚(Jennifer Zeng)女史が、興味深い考察を提供してくれた。
「まず、CCPは尖閣諸島周辺で日本と強い摩擦を引き起こす。その後、『日本の新しい軍国主義』と戦う名目で団結を呼び掛ける」
曾錚女史は法輪功弾圧で投獄された後、約20年前に豪州に亡命した四川出身の人権活動家だ。筆者は、武漢空港新型コロナ対策軍事演習に関する先駆的な検証記事で同女史の存在を知った。
▽流出した広東極秘会議の関連資料(曾錚)
“ネオ軍国主義”との戦いを標榜し、台湾国民党一派と統一戦線を組む戦術は過去にも指摘されている。しかし、ウクライナ戦争の勃発で捉え方に変化が起きた。
プーチンは軍事侵攻を正当化するべく「ネオナチとの戦い」をプロパガンダに使った。中共の統一戦線工作は、その真似にも見えるが、時系列は逆で、中共が根源だ。
▽中支・蘇州の官製反日デモ’12年(共同)
中共は遥か以前から我が国の良識派に対し、軍国主義者・極右勢力といったレッテルを貼り、反日メディアも加担した。プーチンは中共の古びた宣伝工作を寸借したに過ぎない。
クレムリンが「ネオナチとの戦い」を掲げ、国際社会を惑わせ始めたのは、いつ頃だったか…少なくともミンスク合意の過程で、そうした稚拙なプロパガンダに頼ることはなかった。
▽ローマのロシア抗議デモ2月25日(ロイター)
「偉大なるロシアの復興」を唱えた開戦前夜のプーチン演説も、習近平のスローガンに似ていた。模倣である。親ロシア派の保護・救出を掲げた侵攻の根拠も同じで、オリジナルは中共の民兵だ。
中共による他国侵攻の手順がウクライナ戦争から見えて来る。そして単純にロシアが中共の戦術を真似ているのではなく、相互に影響を与え、反省点を踏まえて巧妙化するだろう。
▽プー&プーチンの料理ショー’18年(ロイター)
海空軍の連携に留まらない。中露は前哨戦の鍵となる情報戦で既に共闘し、我が国や台湾国、インド・太平洋全域に暗い影を落とす。
〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
クリック1つが敵に浴びせる銃弾1発となります
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エントリ参照:
□統合幕僚監部HP7月5日『ロシア海軍艦艇の動向について』
□統合幕僚監部HP7月5日『中国海軍艦艇の動向について』
□統合幕僚監部HP7月2日『ロシア海軍艦艇の動向について』
エントリ参考記事:
□JAPAN Forward6月11日『Unifying Taiwan Begins with the Senkakus』
□Jennifer’s World(曾錚的世界)5月17日『【Top Secret Recording】 War Mobilization Meeting of the Southern War Zone of the PLA: Guangdong Province in The State of War』
□台灣英文新聞5月24日『Alleged leaked audio reveals Chinese commanders planning mobilization for war with Taiwan』
□Epoch Times5月27日『Guangdong Allegedly Shifting to ‘Wartime System’ Would Pose an Imminent Threat to Taiwan: Analyst』
□JB Press6月16日『習近平が突然署名した「非戦争軍事行動綱要」とは一体なにか(福島香織)』
http://nvkanagawa.blog.fc2.com/blog-entry-1726.html
□時事通信7月5日『【中国ウオッチ】中国、「非戦争軍事行動」の基本方針制定─台湾・南シナ海作戦を想定?』
□産経新聞7月4日『中国、戦争外の軍事行動規定 グレーゾーンに警戒も』
□読売新聞7月5日『ロシア艦が尖閣接続水域を航行、日本政府は外交ルート通じ「関心表明」』
□時事通信7月5日『「ロシア艦監視の可能性」 中国軍艦の尖閣接続水域進入―松野官房長官』
□産経新聞7月5日『岸防衛相「深刻に懸念すべき」中国艦の尖閣水域進入』
□産経新聞7月4日『尖閣接続水域に中露軍艦 平成28年6月以来』
7月4日早朝、ロシア海軍と中共海軍のフリゲート隻が魚釣島南西の接続海域に侵入した。尖閣を脅かす中露連携の異常な示威行動だが、我が国政府の反応は鈍く、疑問の余地が残るものだった。
「ロシア艦は悪天候を避けるために当該海域を航行し、中国艦はロシア艦の航行に対応してこのような航行を行った可能性もある」
▽会見する松野官房長官7月5日(時事)
松野官房長官は5日午前の定例会見で、好意的な解釈に終始した。台風4号の影響で時化る中、ロシア艦が誤って接続水域に入り、中共艦はそれを監視する目的で追うように侵入したとの見方を示したのだ。
海自の偵察活動によると、露海軍ステレグシチーII級フリゲートは4日午前7時過ぎから1時間余り尖閣沖の接続水域に侵入。中共ジャンウェイⅡ級フリゲートは約6分間、接続水域内に航行した。
▽中露海軍艦艇が同時侵入した海域(読売)
中共艦艇が露艦を「監視する」という解釈が飲め込めない。政府は中共に対し「重大な懸念」を伝えて抗議する一方、ロシアには該子ルートを通じ、事実関係を確認する「関心表明」を行うに留まった。
荒天による退避行動との見方は防衛省側から示されたものだが、早計だった。ロシア海軍フリゲートは4日夜、駆逐艦など2隻を伴って久場島沖の接続水域に再び侵入する。明らかな挑発行動だ。
▽東シナ海北上する露海軍フリゲート7月5日(統幕監部)
中露艦艇の尖閣接続海域侵入は平成28年6月にも起きている。その際、安倍首相は官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置。防衛省も緊急幹部会議を開き、情報収集と分析に当たった。
▽前回の中露艦艇侵入時の号外(産経file)
この時と比べると温度差が激しい。現在、ロシア海軍は戦時態勢で黒海では実弾を用いた砲撃を繰り返す。平時だった6年前とは違い、同国の軍事行動に細細心の注意を払う必要がある。
しかも、侵入した駆逐艦やフリゲートを含むロシア艦隊は6月中旬から東北・千葉沖を航行し、今月2日には石垣島沖を通って東シナ海に抜けている。ウクライナ戦争は遠い欧州のページェントではない。
【慣例破った中共軍の台湾挑発航行】
「可能性は考えられるが、断定的に言うことは出来ない」
中露艦隊の尖閣接続水域侵入について岸信夫防衛相は7月5日、そう会見で語った。連携した行動ではなく偶発的との見方に傾く。一方、中共軍の動きには警戒感を強める。
「海空戦力による南西諸島や台湾周辺の軍事活動が益々活発化している」
▽会見する岸防衛相7月5日(FNN)
沖縄「慰霊の日」にあたる6月23日、中共海軍艦隊が沖縄本島と宮古島の間を抜けて北進。その前々日、ルーヤンⅡ級ミサイル駆逐艦「西安」とコルベットは与那国島西方を抜けて太平洋に向かった。
防衛省の発表は台湾国内で大きな注目を集めた。従来、中共艦艇は太平洋に出る際、沖縄本島と宮古島の間を抜けるか、遥か西方のルソン海峡を航行するのが通常だった。
▽台湾・花蓮沖を航行した中共海軍「西安」6月24日(統幕監部)
しかし、この慣例は破られた。中共艦艇が航行した海域は台湾国東部の都市・花蓮から僅か150kmしか離れていなかった。台湾国民を強く刺激するルートである。
「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」
▽南独で開催されたG7サミット6月27日(AP)
6月末のG7エルマウ・サミットでは、昨年に引き続き、首脳宣言に“台湾海峡”が盛り込まれた。しかし、台湾周辺で活発化する中共軍の具体的な動きが我が国で報道されることは少ない。
そして、中共海空軍の挑発的な行動と歩調を合わせ、尖閣を含む先島諸島周辺で不審な動きを続けるロシア海軍。我が国は、この不気味な軍事連携を国際社会に向けて強く発信すべき立場にある。
▽列島を1周した露海軍艦隊の航路(統幕監部)
岸防衛相が見解で示した通り、南西諸島方面における中露海軍の連携に確証はない。だが、無秩序・無計画な両軍の行動が偶然折り重なった結果ではないだろう。
昨年10月、中露海軍の合同艦隊10隻が津軽海峡・大隈海峡を抜け、我が国に衝撃が走った。更に翌11月、中露空軍の爆撃機4機が編隊を組んで東シナ海上空を旋回し、宮古島沖を抜けて飛行した。
▽長崎沖を航行する中露合同艦隊R3年10月23日(防衛省)
ウクライナ東部国境沿いにロシア陸戦隊9万人の集結が明らかとなり、電撃侵攻が囁かれ始めた頃である。この時。既に中露の軍事連携は次のステップに進んでいたのだ。
【海上民兵が出撃する特別軍事作戦】
「新時代の軍隊の使命、任務を有効に履行する為に重要な意義がある」
中共国防部のスポークスマンは6月30日、会見で軍の新たな行動規定に触れ、自画自賛した。新たな規定とは、習近平の署名を経て施行された「非戦争軍事行動要綱」だ。
中共宣伝機関は概要を発表したが、6章59条からなる全文の内容は不明で、様々な憶測を呼ぶ。台湾国内では、グレーゾーンを拡大して台湾侵攻の隠れ蓑にするのが目的だとの声が上がる。
▽宣伝機関が伝えた新要綱の概要6月13日(NHK)
ロシアはウクライナ戦争を「特別軍事作戦」と呼称し、中共も従った。非戦争軍事行動は米軍が90年代に発案した概念とされるが、台湾国の軍事アナリストは、2月の侵攻と無縁ではないと明言する。
「直接関連があるだろう。ロシアはウクライナ戦争を特別軍事行動と定義し、侵略ではないとしている。その目的は反ナチズムを主張する為だ」
南シナ海や台湾での軍事活動を国内法的に「非戦争」と位置付け、国際社会に強弁する腹積もりか。強制収容・大虐殺を“人民戦争”と呼称するウイグル弾圧とは対照的にも見える。
▽ウルムチに集結する武警の装甲車’13年(ロイター)
ゼロ・コロナ政策の恒久化で反発が頂点に達した際、習近平陣営が反対勢力を一網打尽にする為の布石と見る分析もあるが、楽観的だ。民衆鎮圧は中共のルール上、水平射撃の皆殺しで対処できる。
新要綱は、まず台湾国侵攻を念頭に置き、南シナ海での衝突・局地的な戦闘を想定したものと考えられる。中共“海の侵略”では正規軍出動の前に海上民兵が捨て駒の役割を果たす。
▽比領海に侵入した中共海上民兵の船団’21年(AP)
「ベトナム・フィリピン・マレーシアその他の国の侵害に対処する為、民兵漁船を組織し、海上での人民戦争を優位に進める」
広東省党常務委員会の会議音声が外部にリークされた。中共軍南部戦区の幹部も参加した最高機密を含む極秘会議だ。約1時間に渡る綿密で詳細な討議。こうした党の重要会議が暴露された例は過去にない。
「14万人の軍人に“特別な才能”を加え、953隻の船舶、1,653セットのドローンを活用し、台湾海峡での決戦を支援する」
▽内容が暴露された広東省の極秘会議5月14日(曾錚)
広東省の党組織による後方支援や都市防衛に主眼が置かれていることから、軍事力の展開や作戦に関する説明は乏しい。だが、全文不明の新綱領よりも具体的で、決戦を間近に控えた緊迫感に満ちている。
【中共に学んだ露軍ウクライナ情報戦】
流出した広東省CCP幹部と南部戦区の極秘会議は5月14日に開かれた。それが約1週間後にYouTubeにアップされる。スッパ抜いたのは在米メディアの「路德社」だ。
音声データの入手経路は明かされていない。余りの早技だったことや、公開元が郭文貴に近いことから主流メディアは無視。大紀元も概要が伝えたが、独自に信憑性を確保していないと断る。
会議内容もロジ面に偏っている為、軍事系からの食い付きも悪い。その中、全ての音声を英語に翻訳・書き起こした亡命支那人の曾錚(Jennifer Zeng)女史が、興味深い考察を提供してくれた。
「まず、CCPは尖閣諸島周辺で日本と強い摩擦を引き起こす。その後、『日本の新しい軍国主義』と戦う名目で団結を呼び掛ける」
曾錚女史は法輪功弾圧で投獄された後、約20年前に豪州に亡命した四川出身の人権活動家だ。筆者は、武漢空港新型コロナ対策軍事演習に関する先駆的な検証記事で同女史の存在を知った。
▽流出した広東極秘会議の関連資料(曾錚)
“ネオ軍国主義”との戦いを標榜し、台湾国民党一派と統一戦線を組む戦術は過去にも指摘されている。しかし、ウクライナ戦争の勃発で捉え方に変化が起きた。
プーチンは軍事侵攻を正当化するべく「ネオナチとの戦い」をプロパガンダに使った。中共の統一戦線工作は、その真似にも見えるが、時系列は逆で、中共が根源だ。
▽中支・蘇州の官製反日デモ’12年(共同)
中共は遥か以前から我が国の良識派に対し、軍国主義者・極右勢力といったレッテルを貼り、反日メディアも加担した。プーチンは中共の古びた宣伝工作を寸借したに過ぎない。
クレムリンが「ネオナチとの戦い」を掲げ、国際社会を惑わせ始めたのは、いつ頃だったか…少なくともミンスク合意の過程で、そうした稚拙なプロパガンダに頼ることはなかった。
▽ローマのロシア抗議デモ2月25日(ロイター)
「偉大なるロシアの復興」を唱えた開戦前夜のプーチン演説も、習近平のスローガンに似ていた。模倣である。親ロシア派の保護・救出を掲げた侵攻の根拠も同じで、オリジナルは中共の民兵だ。
中共による他国侵攻の手順がウクライナ戦争から見えて来る。そして単純にロシアが中共の戦術を真似ているのではなく、相互に影響を与え、反省点を踏まえて巧妙化するだろう。
▽プー&プーチンの料理ショー’18年(ロイター)
海空軍の連携に留まらない。中露は前哨戦の鍵となる情報戦で既に共闘し、我が国や台湾国、インド・太平洋全域に暗い影を落とす。
〆
最後まで読んで頂き有り難うございます
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【応援】
エントリ参照:
□統合幕僚監部HP7月5日『ロシア海軍艦艇の動向について』
□統合幕僚監部HP7月5日『中国海軍艦艇の動向について』
□統合幕僚監部HP7月2日『ロシア海軍艦艇の動向について』
エントリ参考記事:
□JAPAN Forward6月11日『Unifying Taiwan Begins with the Senkakus』
□Jennifer’s World(曾錚的世界)5月17日『【Top Secret Recording】 War Mobilization Meeting of the Southern War Zone of the PLA: Guangdong Province in The State of War』
□台灣英文新聞5月24日『Alleged leaked audio reveals Chinese commanders planning mobilization for war with Taiwan』
□Epoch Times5月27日『Guangdong Allegedly Shifting to ‘Wartime System’ Would Pose an Imminent Threat to Taiwan: Analyst』
□JB Press6月16日『習近平が突然署名した「非戦争軍事行動綱要」とは一体なにか(福島香織)』
http://nvkanagawa.blog.fc2.com/blog-entry-1726.html
□時事通信7月5日『【中国ウオッチ】中国、「非戦争軍事行動」の基本方針制定─台湾・南シナ海作戦を想定?』
□産経新聞7月4日『中国、戦争外の軍事行動規定 グレーゾーンに警戒も』
□読売新聞7月5日『ロシア艦が尖閣接続水域を航行、日本政府は外交ルート通じ「関心表明」』
□時事通信7月5日『「ロシア艦監視の可能性」 中国軍艦の尖閣接続水域進入―松野官房長官』
□産経新聞7月5日『岸防衛相「深刻に懸念すべき」中国艦の尖閣水域進入』
□産経新聞7月4日『尖閣接続水域に中露軍艦 平成28年6月以来』
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